福島民友新聞社と一ツ橋文芸教育振興会は17日、会津若松市の会津工高と会津若松ザベリオ学園高で「高校生のための文化講演会」を開き、著述家で書評家の永田希さんが「教養、わからなくてもいいの?」と題して講演した。永田さんは「教養があると人生が良くなっていく。知識ではなく、知恵としての教養を身に付けてほしい」と語りかけた。文部科学省、県教委、集英社の後援。
永田さんは米コネティカット州生まれ。書評サイト「Book News」を主宰する。講演では生徒を前に、大人になって友達が減ったという自身の失敗談を披露し「相手の弱いところを突いて攻撃していた」と打ち明けた。
そうならないためにはコミュニケーションを取る際に、共感と留保が大切だと強調。「直感でそのまま相手に伝えてしまえば、相手が傷ついてしまうこともある。思ったことはすぐに伝えないでメモを取る。そして相手に共感して話す」と実践例を紹介した。
その上で「教養とは留保だ」と位置付け「メモを取る時間の中で、自分のことを見直す。それを繰り返すことで知恵としての教養が身に付いていく」と述べた。
講演会に合わせ、同振興会は両校にそれぞれ集英社文庫100冊を贈呈した。
■講演要旨
コミュニケーションで大切な要素は共感、直感、分析、留保の四つ。僕は直感と分析だけでコミュニケーションを取り、相手の弱いところを突いていたら、友達がいなくなった。高校時代から今も付き合いがある友達は1人しかいない。
そうならないためには、共感と留保が大事。思ったままのことを話さないようにする。教養とは留保のこと。例えば、腹立つことを言われてむかついて「何でそういうことを言うの」と返すと直感になる。
一方で「考えさせて」というのが留保。相手に説明させるのではなく、自分も考えているので共感になる。さらに、なぜ相手がそんなことを言い出したのか分析する。友達のことを分析して、自分のメモに書いておく人になりましょう。
教養とは、暗記して知識を披露するための「知識としての教養」と、それを生活に生かして良い人生を生きるための「知恵としての教養」の2種類がある。
一般に「教養がない」といって嫌われる教養は、知識のこと。知識はなくてもいいもの。ただ、自分で感じた相手の攻撃性を書いておくのも教養。そういうことをしないと、どんどん人が離れていって、つらい人生を送ることになる。知恵としての教養が大切で、教養があると人生が良くなっていく。