古里・新地町に拠点を置いて活動した画家斎藤研さん(1939~2020年)の作品を網羅した画集「斎藤研集成」が完成した。斎藤さんは70代後半で死を悟ると「自らの生涯を一冊に込める」との思いで画集の制作を進めた。亡くなった後、思いは友人らに引き継がれ、刊行に向けた作業が続けられていた。死後4年余りを経て、斎藤さんの晩年の情熱はついに結実した。
斎藤さんは東京・池袋生まれ。父が第2次世界大戦で戦死し、母方の祖父が住んでいた新地町に移った。相馬高を経て、東京芸大に進み、卒業後は女子美術短期大の教授などとして活躍した。だが、古里への思いは断ちがたく、1992年に新地町にアトリエを開いた。新地では、海や里山、まちの風景を描いた。古里を襲った東日本大震災と向き合う作品も残している。
震災から5年後、斎藤さんに食道がんが見つかった。死期が近いことを知ると、仕事の集大成となる画集の制作を構想した。表題を「斎藤研集成」に決め、収録する作品の撮影などに取り組んだ。だが、完成を見ることはできなかった。
亡くなった後、斎藤さんを慕う友人らは斎藤研記念研究会を設立。画集を制作したり、新地町で遺作展を開催したりしながら、町内のアトリエの整備などを続けてきた。完成した画集は縦30センチ、厚さ5センチ(492ページ)、重さ3・7キロ。同会の代表金井訓志さん(73)は「画集は分厚くて、重くて、大きい。全てを載せたいと思った斎藤さんの望んだ形になった」と胸を張る。
収録された作品は739点。作品を年代順に並べ、作風の変化などが分かる一覧も加えた。制作時の下絵や資料写真も掲載しており作品を完成させるまでの斎藤さんの思考過程も垣間見ることができる。金井さんは「画集は絵を楽しめるのはもちろん、斎藤研のものの考え方や感性、彼の人生をも、のぞき込むことができる一冊になった」と語った。刊行数は500冊。価格は2万9700円。問い合わせは同研究会(電話027・231・0583)へ。