南相馬市原町区の障害者支援施設「原町共生授産園」で、40代の男性入所者に暴行し、けがを負わせたとして、傷害の罪に問われた、いわき市小名浜字芳浜、元職員の男(24)の判決公判は20日、地裁相馬支部で開かれ、岩田真吾裁判官は懲役1年6月、執行猶予3年(求刑懲役1年6月)を言い渡した。
判決理由で岩田裁判官は男が支援や介助するべき立場にありながら、男性の言動に腹を立て、靴を履いた足のつま先で思い切り蹴り、けがを負わせたとし、「経緯や動機に酌むべき事情はない」と述べた。また、事件以前から暴力を加えたことがあったと指摘し、「安易に暴力を利用しようとする被告人の意思決定は強い非難に値する」と断じた。一方で、男が反省の態度を示していることなどから、執行猶予とした。
判決によると、男は今年3月17日午前2時半ごろ、施設内で男性入所者の左太ももを蹴り、動脈の損傷など入院加療約4週間のけがを負わせた。
今回の事件を受け、県は、原町共生授産園を運営する福島県福祉事業協会(富岡町)に対して、同施設での新規利用者の受け入れを3カ月停止させる行政処分をしている。
家族「施設は責任を考えて」
公判後、報道陣の取材に応じた男性の母親と妹は、事件以前から男性への暴力が続いていたとし、民事提訴も視野に、施設側の責任も問う考えを改めて示した。妹は「誰も何も気付けなかったで、終わることはできない。なぜ気付けなかったのか、何かできることはなかったのか、施設自身がしっかり考えてくれないと、何も解決にならない」と話した。
男性は男による暴行を受けて入院し、退院した2日後の今年4月14日、家族で花見に出かけた際に食べ物を喉に詰まらせ、死亡した。