政府が花粉症対策として発生源となるスギ人工林の伐採と花粉飛散の少ない品種への植え替えを集中的に進める「重点区域」について、福島県内では湯川村を除く58市町村の計1万7241ヘクタールと見込んでいることが、県への取材で分かった。面積に換算すると県内スギ人工林(民有林)の約13%に当たり、県は各市町村や森林所有者らと協議を進め、詳細な区域を決定する。早ければ本年度から伐採に着手する見通しだ。
スギ花粉症の患者は国民の約4割と推計され、大きな社会問題となっている。政府は昨年まとめた対策の中で、10年後にスギ人工林面積の約2割減、約30年後に花粉発生量の半減を目標に掲げ、各都道府県に伐採や植え替えの重点区域を設ける方針を盛り込んだ。県によると、本県のスギ人工林の面積は2022年3月末時点、13万3526ヘクタールで全国6番目の広さがある。
県は国の方針に基づき、林道から500メートル以内の法令規制のない普通林で、苗木を植栽してから41年以上経過し、利用期を迎えたスギを伐採の基準にした。県はこれらの条件を満たしたエリアを各市町村に示しており、生育の現状や関係者の意向を確認した上で、重点区域とする方針だ。
伐採や植え替えは、森林整備法人や森林組合などが担う予定で、国や県が必要な経費の7割程度を補助する。植え替えでは、花粉量が従来の半分以下で、成長の早さが1.5倍の「スギ特定苗木」の活用を見込む。スギ特定苗木は県内で栽培。通常より成長が早く、生育の妨げとなる雑草林を刈る回数を減らせるため、作業の省力化への期待は大きい。
ただ、重点区域で伐採されたスギについては木材としての利活用が課題で、全国的に伐採量が増えればスギ材の供給過剰も懸念される。県は「人口が減少する中、日本全土でスギが市場に出回れば需要を供給が上回り、値段の低下が危惧される。今後の状況把握にしっかり取り組みたい」(林業振興課)としている。