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吃音の若者、接客に挑戦 踏み出す一歩…ゆっくり見守って

09/24 10:25

三重県で2022年に開かれたカフェで接客する吃音の若者ら。本県での開催は初めてとなる
カフェを企画した発起人の奥村さん

 発話障害の一つ、吃音(きつおん)の若者が接客するカフェが10月19日、福島市に一日限定でオープンする。県内初の取り組みで、店名は「注文に時間がかかるカフェ」。話し方に悩みや不安を抱える県内の高校生や大学生らが店員となり、接客に挑戦する。発起人で、自身も吃音者である奥村安莉沙さん(32)=東京都=は「吃音を理解してもらうとともに、若者が一歩を踏み出すきっかけになればうれしい」と思いを語る。

 他のカフェとは違い、来店者が店員のスピードに合わせて注文したり、会話を楽しんだりして過ごす店だ。店員には決まった接客マニュアルは用意されていない。

 マスクや名札には各店員が望む「対応方法」が書かれている。「言い終わるまで待ってほしい」「助け舟を出してほしい」など。それを見ながら客がコミュニケーションを図る仕組みだ。当日は、カフェの趣旨に賛同する人からクラウドファンディング(CF)で集まった資金を使うため、全品無料で提供する。

 接客を予定するのは県内の3人。サポート役を務める奥村さんは「カフェでの経験と挑戦が、踏み出すきっかけになってほしい」と思いを込める。これまで全国31カ所で同様のカフェを開いてきた奥村さん。開催する理由として「『吃音者』とひとまとめにせず、症状や向き合い方はそれぞれ違うことを理解してもらいたい」との願いがある。吃音者は全国に120万人いるとされるが、目に見えにくい障害のため社会的認知が低く、偏見や差別に苦しむ人も多いからだ。

 企画した奥村さんは2歳から吃音の症状があり、かつて苦い体験をした。吃音が原因で幼少期にいじめを受けたり、就職活動で200社から面接で落とされたりした。その経験から「吃音であることが知られないよう、人前で話さないようにしていた」という。

 ただ、25歳でオーストラリアに語学留学して考えが変わった。働いたカフェは、障害や病気の人が生き生きと自信を持って働き、吃音を受け入れてくれる場所だった。「悩むことはなかった」と話すように、理解あるオーストラリアのような環境の大切さを痛感し、吃音者によるカフェを開くことを思い付いたという。

 2021年8月に東京都で初めて開催すると、反響は大きく、依頼が相次いだ。現在、全国各地を移動しながらカフェを開店している奥村さんは「若者が頑張る姿を温かく見守ってほしい」と話す。 (江藤すず)

 定員40人、事前予約制

 福島市本町のまちなか交流施設ふくふるで開く。事前予約制で、10月5日から公式ホームページで予約できる。定員は40人。時間は午後2時~同6時。問い合わせはホームページの問い合わせフォームへ。

          ◇

 吃音 話し言葉が滑らかに出ない発話障害の一つ。生まれ持った体質的要因や環境要因により発症するとされる。奥村さんによると、推計では全国で症状がある人は子ども10人のうち1人、大人100人のうち1人。対症療法などで症状を和らげる方法はあるが、国内で吃音を専門的に扱う医療機関は少なく、治療は広まっていないと指摘されている。

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