田村市船引町でキノコ栽培を営む「移ケ茸(うつしがたけ)」代表の安田悟さん(45)は本年度、東京電力福島第1原発事故の風評被害の影響で県内から姿を消していた県産マッシュルーム栽培を復活させた。このマッシュルームを使った料理が今月からいわき市のスパリゾートハワイアンズのレストランで提供されており、26日に報道陣にお披露目された。安田さんは「栽培仲間を増やしていきたい」と県産マッシュルームの拡大へ意欲を語った。
安田さんは40歳の時、19年間勤めた本宮市の自動車部品メーカーを退職し、やりがいを求めてキノコ栽培を始めた。安田さんによると、県産マッシュルーム栽培は2012年、県内唯一の生産者が風評被害の影響で生産をやめたことで途絶えた。安田さんは20年に千葉県の事業者から生産資材を購入して試験栽培に着手、今年から県内唯一の生産者として本格的な栽培を始めた。現在は月に200~300キロ収穫しているという。
マッシュルーム栽培は一般に多額の初期投資を必要とするが、安田さんは被災地の新規事業を対象とした福島イノベーション・コースト構想推進機構の補助金を活用し、農業用ビニールハウスの中に断熱材で栽培用の箱を作る方法を開発し、低コスト化を図った。
ハワイアンズのリゾートブッフェ「ラティオ」の渡辺忠充料理長は7月に安田さんと出会い、宿泊者向けの料理にマッシュルームを活用することを決めた。「通常のマッシュルームより水分量が少なく食感がいい。県産の食材はお客さまに喜んでもらえる」と話す。安田さんは「再生可能エネルギーを活用した農業など、今後も新しいことに取り組んでいきたい」と意気込む。ハワイアンズで開かれたお披露目会には、同機構福島オフィス産業集積部の小林正典部長が出席した。