須賀川市の「須賀川特撮アーカイブセンター」は3日、開館から5周年を迎える。同市出身でウルトラマンの生みの親として「特撮の神様」と称される故円谷英二監督が礎を築いた特撮文化。その発信拠点で行われる「特撮塾」で学んだ中高生が映画製作の道を選択するなど、施設を核にした育成が芽吹きつつある。
「塾での学びや仲間とのつながり、地域の応援があって作品を作れている」。施設の開館から2年後の2022年に開講した特撮塾1期生の近内翔太さん(須賀川創英館高2年)。塾では週末を中心に約10カ月、最前線で活躍するプロから、撮影技術や映像編集などの手ほどきを受け、短編映画を製作した。卒業後も塾に参加して後輩らをサポートしたり、現役高校生ながら”アマチュア監督”として、精力的に映画製作に取り組んでいる。
作品の企画や脚本、怪獣やミニチュア製作、撮影、動画編集などを全て手がける。特撮シーンもふんだんに盛り込み、地元の知人をエキストラで起用して須賀川の「なまり」を生かしたり、特産のキュウリを題材にするなど、ユニークな発想で地元の魅力を取り入れている。「今後は地元で作品を披露する機会をつくりたい。高校卒業後は専門学校に進み映画監督を目指す」と目を輝かせた。
3日に樋口監督らトークイベント
5周年記念イベントが3日に開かれる。NPO法人アニメ特撮アーカイブ機構(ATAC)副理事長で映画「シン・ウルトラマン」監督の樋口真嗣(しんじ)さんや「ウルトラマンブレーザー」の監督で特撮塾長の田口清隆さんらによるトークショーなどが行われる。
須賀川特撮アーカイブセンター 2020年11月3日の「文化の日」に合わせて開館。破棄、散逸している現状が危惧されていた特撮ミニチュアなどの貴重な資料を適切な環境で保存しようと整備され、修復、調査研究も行っている。撮影などで使われた資料の一部が見学でき、開館から今年9月末までの来館者は12万5734人となった。
