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【新まち食堂物語】四季彩 柔・白河市 海鮮料理、メニュー充実

2025/11/02 10:45

  • 動画付き
人気の「アジフライ御膳」の準備をする君島さん。鮮度の高いアジを使用している
仕入れ状況によって異なる「刺し身御膳」

 白河市のシンボル小峰城が見える通りに「お食事処『四季彩(しきさい) 柔(やわら)』」が店を構える。「料理人人生47年。和食一本でやってきました」。長年、ホテルや旅館などで料理長を務めてきた君島人志さん(64)が切り盛りする。日本酒の品ぞろえが豊富な店として人気を集めている。昼の時間帯は和食のプロが作る御膳料理が、美食な市民らの胃袋をつかんで離さない。

 海鮮関係のメニューが充実している。食材を仕入れるため毎朝、白河市や郡山市、栃木県の市場へ足を運ぶ。「出合える食材は毎日異なる」。その日一番の食材を仕入れて献立を考えるため、提供するメニューは日々異なる。「刺し身御膳」のネタも日替わりだ。肉やコメは地元産を使うなど、材料にこだわる。

 アジフライ人気

 中でも人気なのが「アジフライ御膳」。衣はサクサクで、中はふっくらと仕上がっている。使用するのは、刺し身としても食べられる鮮度の高いアジ。旬の時期はもちろん、「季節に合わせて、産地を変えながら、質の良いアジを手に入れている」と君島さんは語る。

 厨房(ちゅうぼう)に立ったのは18歳から。安積商高(現帝京安積高)卒業後、親族に料理関係者が多いため、自然と同じ道に進んだ。須賀川市の料亭で3年間、住み込みで修行。師匠の技を見て盗み、技術を身に付けた。その後、白河市の結婚式場やホテル、旅館で働き、料理長を務めた。冠婚葬祭や大人数の宴会で会席料理を振る舞い、和食を極めた。

 料理の道に進んで以降、「いつかは独立を」という思いを持ち続けていた。子ども3人が自立し、精神的な余裕が生まれた頃、開店準備に取りかかった。選んだ場所は、白河市の小峰通り沿い。「城が見える最高の場所で店を開きたかった」。2017年1月3日、妻八千代さん(64)と一緒に店をオープン。店名の「柔」は、君島さんのライフワークの柔道から1文字を取った。

 味の評判が広がり、市内外から食通が集まった。店は軌道に乗っていたが突然、苦境に立たされた。新型コロナウイルス感染拡大に伴う営業制限で客足がまばらとなり、売り上げが減少。店の存続を懸けて、テイクアウトに力を入れた。

 確かな味、店守る

 総菜や弁当、オードブルなど、注文が入れば何でも作った。「(白河市内に)若い頃は仕出し料理を作って、宴会場に届けていた。昔はそういった文化があったからかな。テイクアウトをやってみたら、何かしら売れたよ」。手の込んだ味が、行き詰まる日常に癒やしをもたらした。コロナ禍が過ぎ、平穏が訪れると、客足はすぐ戻った。

 放送中のNHK大河ドラマに、白河藩主を務めた松平定信が重要人物として登場している。最近はゆかりの小峰城目当ての観光客も店を訪れるという。「今後は清水門が完成して、白河はもっとにぎやかになるだろう。食事に来てくれる人が笑顔になってもらえればうれしい」と君島さん。城下町に花を添える確かな味を、これからも作り続ける。

お店データ

■住所 白河市中町24

■電話 0248・29・8456

■営業時間 午前11時半~午後2時(金、土曜日は仕出し、テイクアウトのみ)、午後5時半~同9時(金、土曜日、祝前日は同9時半)

■定休日 月曜日

■主なメニュー
 ▽アジフライ御膳=1518円
 ▽刺し身御膳=1848円
 ▽会津馬刺し御膳=1738円
 ▽白河黒豚ロースカツ御膳=1738円
 ▽エビフライ・豚ヒレカツ御膳=1628円

 開店祝いの柔道着 

 店を切り盛りする君島人志さんは中学時代に柔道を始め、黒帯を取得。西郷村のスポーツ少年団で30年以上、子どもたちに指導していた。店内に飾られている柔道着の模型は、開店祝いに教え子から贈られたもの。県内外の柔道関係者がよく店を訪れるという。

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