高級魚として知られるチョウザメやクエタマの陸上養殖、葉野菜の水耕栽培、飲食店などが一体となった農水産物の複合施設が浪江町に整備される。町内に設立された新会社「浪江未来ファーム」が運営し、来年春の着工、同年秋の操業開始を目指す。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの産業の再興に向けて、持続可能な1次産業の新たなモデル構築と雇用創出につなげる。
同社が13日、発表した。複合施設ではクエタマを陸上養殖するほか、淡水魚の養殖と水耕栽培を組み合わせた農業システム「アクアポニックス」を導入し、チョウザメと葉野菜を生産する。加工場や物販・飲食店も設ける方針で、同社によると、農水産物の生産も一体となった複合施設は全国でも珍しいという。
国の自立・帰還支援雇用創出企業立地補助金を活用して整備し、町内外から社員やパート約20人の雇用を予定している。具体的な町内の整備場所や生産規模などは調整中。
浪江未来ファームは、投資ファンドのJR東日本ローカルスタートアップ投資事業有限責任組合(LSUPファンド、東京都)、アクアポニックスを手がけるプラントフォーム(新潟県)、陸上養殖システム開発販売のARK(アーク、神奈川県)の3社で設立された。
同ファンドに出資しているJR東日本スタートアップ(東京都)とアークは2022年から浪江町のJR浪江駅でバナメイエビやクエタマの陸上養殖の実証実験を実施。事業拡大による地域産業への貢献を目的に複合施設の整備を決めた。
浪江未来ファームの柴田裕社長は「浪江から『豊かな未来をつくる』という思いを込めて設立した。新たなチームで町の未来、日本の未来に挑戦していく」とコメントした。
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クエタマ 高級魚のクエと大型魚のタマカイを人工的に交配させたハイブリッド種。クエは稚魚から出荷サイズまで成育するのに5年程度かかるのに対し、成長が早く2年程度で出荷できる。クエに似て、弾力がある上品な味わいが特徴。
