日本初開催の聴覚障害者の国際スポーツ大会「東京デフリンピック」は15日の開会式に先立ち、14日にJヴィレッジ(楢葉町、広野町)でサッカー競技が始まる。Jヴィレッジでは準備が整い、各国選手が公式練習に臨み、スタッフが手話で対応する光景も見られた。
サッカーには男子13チーム、女子4チームが出場。日本代表の男子は14日にイギリス、女子は15日にアメリカとの初戦を迎える。いずれも正午開始。決勝は25日。試合観戦は全試合無料。
14日の男子開幕戦に合わせオープニングセレモニーが行われる。15日にはサテライト開会式が行われ、ステージでは、いわき総合高フラダンス部や聖光学院高手話部などが出演する。
Jヴィレッジは東京電力福島第1原発事故の対応拠点となり、2019年に全面再開した。運営本部担当マネジャーの加藤毅さんは「復興の象徴であるJヴィレッジで選手が全力を尽くせるよう運営を進めたい。福島の魅力発信にも貢献したい」と意気込んだ。
Jヴィレッジ近くの楢葉町の「道の駅ならは」では、大会関係者や観戦者の来場を見込む。矢内優美駅長は「おもてなしの心でお迎えしたい。世界の皆さんに復興が進む双葉郡を見てもらいたい」と期待を込めた。
大会は80カ国・地域から約3000人の選手がエントリー。26日まで東京を中心に、21競技が行われる。
バスケ、柔道に県勢3選手
県勢はバスケットボール男子の越前由喜(26)=東京スクラッチ、郡山支援学校教諭=と山田洋貴(36)=東京スクラッチ、いわき市出身、柔道男子73キロ級の蒲生和麻(31)=JR東日本、日大東北高卒=が日本代表として出場する。
バスケットボール男子は16~25日に大田区総合体育館(東京)、蒲生が出場する柔道男子73キロ級は16日に東京武道館で行われる。
手話通訳で運営支える
デフリンピックでは、手話通訳者が耳の聞こえにくい選手と、健聴者の指導者やスタッフらをつなぐ。本県から派遣される吉田愛(めぐみ)さん(35)=福島市=と安斎美和子さん(39)=二本松市=は「夢の舞台で通訳できることがうれしく、貴重な機会に期待と喜びで胸がいっぱい」と意欲を語る。
手話は国や地域で異なり、共通語で使用されるのが「国際手話」だ。大会運営には国内の健聴者も多く関わるため、国際手話を日本語に変換する手話通訳者が円滑な競技運営で重要な役割を担う。
2人は手話の魅力を「通じ合えることの喜び」と語る。吉田さんは海外でも手話を介して気持ちを伝え合えた経験が今につながる原点だ。「小学生の時に覚えたアメリカ手話や身ぶりで通じたことは忘れられない」。国際手話を本格的に勉強し、全日本ろうあ連盟の国際手話通訳者としても活躍している。
安斎さんは国内で開かれる国際交流の場で通訳を務めてきた。デフリンピックを「世界中から集まる人と手話で交流し、通じ合える喜びを感じてほしい」と期待する。吉田さんは「多様な人々のコミュニケーションを考えるきっかけとなり、温かい共生社会が実現してほしい」と願っている。
