子どもたちを笑顔にする小型蒸気機関車(SL)を作る技術は国内唯一。JR貨物の電気機関車「金太郎」「ブルーサンダー」をも生み出す。実はあの「夢の国」の園内を走るSLや、海を越えた台湾の貨物機関車まで福島産というから驚きだ。
起源は鉄道車両の専門会社。現在手がけるのはクレーンなどの荷役機械や橋梁(きょうりょう)まで幅広いが「『何でも屋』を育てる」という方針の下、社員は専門分野を持たない。寸分たがわぬ精密さが求められる業界で、少数精鋭の多能工がそろう。
11月下旬に工場を訪れると、一枚の鉄板が切断や溶接を経て、台湾貨物機関車の車両に生まれ変わろうとしていた。工場内の従業員の平均年齢は36歳だが、70歳を過ぎたベテランも現役。側面部分の責任者を務める斎藤功汰さん(28)は「若手にも任せてもらえる環境。達成感を味わえる」とうなずく。
かつて「技術は背中で継がれるもの」という意識が強かった製造業。2012年には約20年ぶりとなるSL製作の発注を受けたが誰一人として作り方を知らず、元社員らの協力を得て完成にこぎ着けた。注文の頻度が少ないからこそ、今では日頃の点検や整備を通して知見やデータを蓄積し、希少技術を継承する。
社業発展の秘密の一つは、作業効率化のため社員自ら開発した補助器具にある。「毎日がものづくりの連続。地方の一企業だが、唯一無二の技術と人材で社会を支えている」と加藤守社長(77)。その表情は誇らしげだった。
◇所在地 福島市佐倉下字光寿院前1の1
◇創業 1940年
◇売上高 12億円
◇従業員数 60人
◇勤務形態 フルタイム正社員
◇事業内容 鉄道車両やクレーンなどの設計製作
◇公式サイト http://www.kyosankogyo.co.jp
