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【12月7日付社説】教育に新聞を/学校と社会つなげる接点に

2025/12/07 08:05

 新聞は学校での学びと社会をつなぐ接点となり得る。新聞を活用することで、学校や家庭での学びをより充実させてもらいたい。

 今後の社会を生きていくのに必要なのは自ら課題を発見し、解決する主体的な学びであると言われるようになって久しい。学習指導要領は、さまざまな情報や出来事を受け止め、課題を解決していくための力が必要と強調している。

 教科書は子どもたちが身に付けておくべき知識を体系的にまとめたものだ。ただ、検定などを経るため、社会の新しい動きなどが反映されるのには時間がかかる。

 新聞には、まだ教科書には載っていない世界各地の武力衝突や、国内の物価高など現在の社会の動きが網羅的に掲載されている。社会の抱える課題などに気付くのに適した情報源だ。

 教科書と新聞が持つ長所をうまく組み合わせることができれば、学校で学んでいることが、社会や自分の暮らしをより良くしていく上で役立つものであると実感できるだろう。知識と課題への対応力を共に高める授業が、学校には求められる。

 福島市で10月に開かれた、「NIE(教育に新聞を)」の普及に取り組む県NIE推進協議会の研究会では、桜の聖母学院中の3年生が社会科の授業で高市早苗内閣の発足に関する記事を4紙読み比べた。生徒らは「政権に対して批判的か肯定的か、新聞社によって記事の書き方が違う」ことなど、気付いたことを話し合った。

 この授業を参観した日本新聞協会NIEコーディネーターの関口修司さんは、新聞を読み比べることで、社会にさまざまな意見があるのを知ることが大切と話した。交流サイトなどにもさまざまな意見が掲載されているが、事実に基づかないものも多いとし、正確な情報が掲載されている新聞を読むことが重要と指摘した。

 新聞を読むことを通じ、子どもたちが事実に基づき判断する力を高めることを期待したい。

 近年は新聞を購読しない世帯が増えたことで、日常的に新聞を読む機会がない子どもは多い。学校や保護者からは「子どもに新聞は難しい」との声も聞かれる。関口さんはこうした声について、「分かるものだけではなく、ちょっと難しく感じるものの方が子どもは一生懸命に取り組む」と話す。

 子どもが分からない部分は、保護者などが説明してあげれば、子どもの知識向上に加えて、家族の交流にもつながる。保護者は、子どもが新聞に触れる機会を積極的につくってほしい。

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