「仏都会津」を継承しようと、会津工高機械科の生徒が焼失した仏像の復元作業に挑んでいる。福島県磐梯町の国指定史跡「慧日寺(えにちじ)跡」にあった「日光・月光菩薩(ぼさつ)像」2体の復元に向け、3Dプリンターなどを駆使して2カ年計画で取り組む。町は樹脂で作られた生徒たちの仏像を参考に本格復元を進める考えだ。制作に励む3年の横山陽翔さん(17)は「自分たちの技術を生かし、忠実に再現した仏像を完成させたい」と力を込める。
磐梯町が依頼
町が今年、会津工高に縮小模型での仏像制作を依頼した。円城寺(会津坂下町)にある阿弥陀如来坐像(ざぞう)を3Dプリンターで再現した実績を高く評価しての異例の起用だった。機械科の3年生7人が課題研究の一環で制作に取り組んでいる。
日光・月光菩薩像は、薬師如来坐像の両脇に安置されていた脇侍像(きょうじぞう)と呼ばれる仏像。瀬戸内文化財修復所代表(広島県)の小島久典さんが手がけた粘土像のデータや写真を基に、生徒たちは最新技術を取り入れて作業に打ち込んでいる。
まずは月光菩薩像を本年度に完成させ、来年度は日光菩薩像の制作に移る予定だ。現在は樹脂製の仏像を組み立てたり、地元企業の協力を得て表面の質感を詰めたりしている。放課後も集まり、横山さんは「とにかく必死。(データの)出力はもちろん、組み立てにも時間がかかるので大変。仏像の腕や体の厚みの再現にこだわっている」と話す。
縮小模型とはいえ、高さは約1.2メートル。大きな物を3Dプリンターで作るのは難しく、細部を再現するには複数のパーツに分けて出力し、組み合わせる必要がある。忠実な再現を目指す上で1メートルを超える大きさの物に仕上げる作業は難題だが、熱意が生徒たちを突き動かしている。指導する安斎光一教諭(37)が「ものづくりのやりがいを感じ、生徒たちが頑張っている」と目を細めるほどだ。
復元に活用へ
そもそも仏像の詳細が残されていないため、磐梯町は2023年、仏像研究の専門家らによる専門委員会をつくり、準備してきた。慧日寺を創建した高僧徳一(とくいつ)が開いたとされる勝常寺(湯川村)の薬師如来三尊や、東北各地にある薬師如来像を参考に仏像の形を決めた。
完成した月光菩薩像は来年度、金堂に隣接する磐梯山慧日寺資料館に展示される。金堂に安置される日光・月光菩薩像の復元にも生かされる。白岩賢一郎館長(61)は「平安時代の仏像の特徴がしっかり再現されており、完成が楽しみだ。この取り組みが認められ、ほかの仏像などの復元に活用できるかもしれない」と期待を寄せる。
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慧日寺跡 平安時代の807年、「仏都会津」の礎を築いた高僧徳一が創建した。中心建物の金堂には薬師如来像が安置されていたが、明治時代前期に火災で焼失したとされる。1970年に国史跡に指定され、磐梯町が史跡の保存や復元などを進めてきた。本尊の薬師如来が祭られていた金堂を2008年、中門を09年に復元。18年には東京芸大の協力を得て本尊「薬師如来坐像」を展示物として復元した。
