「声」を聞いて、議論で応えて 衆院選公示受け福島県の有権者

 
候補者の第一声を聞く有権者=19日午前、福島市

 衆院選の公示を受け、県民は本県復興に向けた具体的な施策や新型コロナウイルスへの対応などで活発な議論を求めた。

 ワクチン、新薬迅速に

 【医療】新型コロナウイルス禍の中で行われている衆院選。喜多方市の入沢病院の医師入沢優公さん(66)は「3回目のワクチン接種や新薬開発などスピード感を持った対応が必要だ」と指摘し、新型コロナへの迅速な対応を選挙の焦点に挙げる。

 同病院は新型コロナの院内感染を避けるため、自主的に外来受け付けを制限するなどの対応を取ってきた。しかし「収入は減ったが金銭的な支援は受けられなかった」と入沢さん。「借入制度だけでは、返済が始まったら苦しい」と、行政への対応を求めている。

 郡山市の病院に勤務する薬剤師本多真貴さん(27)は、新型コロナワクチンの安定供給に向けた政策の具体化を望む。市民の中には1回目の接種すら受けていない人がいるのが実情で「国の方針と市民感覚には隔たりがある」と感じている。「医療体制の確保や経口薬の開発を含め、感染した人が安心できるような具体策も聞きたい」と期待する。

 福島市の保健師関根佳代子さん(64)は「今後懸念される流行の『第6波』に備えるためワクチン確保や医療体制強化を図り、できるだけ新規感染者を抑えてもらいたい」と訴えた。

 誘客の起爆剤ほしい

 【観光・経済】新型コロナの影響で、県内の観光や経済は落ち込みが目立つ。猪苗代町の平沢屋旅館の専務氏家利康さん(36)は「宿泊費の割引補助はありがたいが、昨年の『Go To トラベル』事業でも、期限が過ぎると予約はぱたりとなくなった」と語り、長期的な視野に立った観光業界への支援を求める。「短期集中の施策は部屋数が少ないとあまりメリットが感じられない。中小規模の事業者への配慮も忘れないでほしい」とも訴える。

 南相馬市の団体職員栗原美紀さん(47)は「新型コロナの影響で観光業界は深刻な打撃を受けたままだ。遠方から本県や南相馬に来てもらえる起爆剤となるようなパッケージをつくってもらいたい」と要望する。白河市の飲食業増子健人(たけひと)さん(59)は「新型コロナが落ち着かなければ飲食店への客足は回復しない。ワクチン接種などを早期に進めて、コロナと共存できる環境を早く整えてほしい」と話した。

 処理水、多方面から意見

 【復興】震災と原発事故から10年7カ月余り。双葉町の自営業高倉伊助さん(65)は、東京電力福島第1原発で発生する処理水の処分方法について「浜通りが選挙区の候補者ならば、特に議論してほしい」と求める。

 高倉さんは、原発事故で被災した地元の双葉海水浴場が再び人でにぎわう風景を取り戻したいと考えている。そのため、処理水を巡る問題には敏感だ。「海水浴や釣り、キャンプで人を呼び込みたい。処理水について議論すべき相手は、漁業者だけではない」と訴える。

 一方、富岡町の高橋幸恵さん(48)は、生活環境の改善を切望する。「2年前から町内で暮らしているが、スーパーの閉店時間は早いし、医療機関の診療科目も少なく生活に不便さを感じる時がある。処理水の問題なども大事だが、身近な課題の解決にも取り組んでほしい」と求めた。

 浪江町の電気工事業蒲生紘司さん(37)は、双葉郡で進む産業復興に関して「首都圏の企業が中心で事業が進み、地元企業が参入する機会が少ない」と指摘。「地元企業が希望を持てるような産業面の政策や論戦を聞いてみたい」と話した。

 長期的な教育支援

 【判断材料】県民は1票をどのように投じるのか。二本松市の会社役員野地幸司さん(44)は、労働者の確保を課題に感じているといい、「特に若者が求人を出しても応じてくれないため、社員の高齢化が進んでいる」と実情を説明。県内企業の行く末を見据え、「未来選択選挙というなら、少子高齢化に伴う人口減少対策、中小企業対策をしっかりと論じてほしい」と求めた。

 須賀川市のパート従業員佐藤朋美さん(36)は3人の子持ち。「進学を考えると、先々の教育費の負担が大きい。目先の問題だけではなく、将来に向けた支援策を考えてくれる人を応援したい」と考えている。普段は主にスマートフォンで情報を集めているといい、「新聞やテレビだけではなく、会員制交流サイト(SNS)も活用して政策や取り組みを発信してほしい」と要望する。

 相馬市の鈴木誠一さん(68)は「長引くコロナ禍で我慢も限界に来ている。国民一人一人が納得できる対策を打ち出してほしい」とし、「私も来年で70歳。高齢者に関する施策についてもしっかりと論戦で深めてほしい」と訴えた。

 男女間の賃金格差解消

 【若者の視点】有権者になったばかりの高校生ら若者も、今回の衆院選に注目する。平商高3年の斎藤涼名(すずな)さん(18)は、投票権を得てから初めてとなる国政選挙に向け、学校で選挙の学習をしたといい「未来のことをしっかり考えている候補者に投票したい」と話す。磐城桜が丘高3年の中根凛さん(18)は「選挙は分からないことが多い。各政党の新型コロナ対策を見比べたい」と考えを語った。

 福島成蹊高3年の小池陽夏(ひなつ)さん(18)は「コロナ下で経済状況が大変な中、男女間の賃金の格差をなくしてほしい。新聞を積極的に読んで後悔のない投票をしたい」と意気込んだ。

 会津大4年の内山仁さん(22)は「年金や医療費など、高齢者が優遇される政策が多いと感じる。若者がなかなか政治に興味を持てない一因ではないか」と指摘。「テレビよりインターネットなどをもっと活用してもらって、若者の票が集まるといい」と期待を込めた。