【衆院選・有権者のまなざし】観光/変わる旅、補助も柔軟に

 
電動キックボード貸し出しサービスの実証実験に加わっている渡部さん。観光の形が変わる中で観光客呼び込みに知恵を絞る

 車道を忙しく行き交う車とは別世界にいるように、観光客が珍しい乗り物を操り会津若松市内を巡る。公道を走れるナンバープレートが付いた電動キックボードだ。市内周遊の新しい観光の形として注目が集まる。新型コロナウイルスの感染拡大で疲弊した「観光」を立て直そうと、観光団体や事業者は知恵を絞る。

 団体から個人に

 「観光がマス(団体)から個に変化している。新しいものを取り入れ、新たな客層を生み出したい」。会津若松市七日町のゲストハウス「Kaien(カイエン) Hostel&Cafe BAR」代表の渡部景秋(かげあき)さん(46)は観光を取り巻く変化に対応し、豊かな発想力で新たな戦略を練る。

 カイエンがオープンしたのは昨年4月。インバウンド(外国人観光客)増加に目を付け、外国人が好む低価格で宿泊できる施設として開業した。しかし間もなく新型コロナが世界中で猛威を振るい、県内随一の観光地でもある会津若松市内からも外国人の姿は消えた。

 ライフスタイルが一変し旅行の形も団体から個人に変化しつつあることを捉え、バスや徒歩が多い周遊観光を見つめ直した。会津若松観光ビューローなどと連携し、新たな観光ツールとして「電動キックボード」を導入する実証実験に加わった。渡部さんは「新しいものがあって、それが観光に寄与できるものならどんどん取り入れたい」と考えている。

 高価格帯に集中

 新型コロナからの観光復興に向け、政府が導入した観光支援事業「Go To トラベル」。全国では早期再開を求める声もあるが、渡部さんは「施策そのものはすごくよいもの」と前置きした上で「事業者の規模に配慮がほしい」と注文する。カイエンの運営方針は低価格で泊まってもらい、浮いたお金を食事や体験、お土産など地域に落としてもらうこと。だが、半額補助の方法では、割引額が大きくなる高価格帯の施設に人が流れ、低価格の宿泊施設は客に選ばれにくいと感じている。渡部さんは解決策として「補助は金額を一律にしてもらった方がいい」と提案する。

 本県は会津、中通り、浜通りそれぞれに歴史、文化、気候に育まれた観光地がある。その多様性も魅力の一つで、渡部さんが必要だと感じているのは地域同士が絡み合うことだ。「県全体の広域的な連携がもっと必要だと思う。観光客を奪い合うのはもったいない」(阿部裕樹)

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 コロナ禍長期化、大幅な観光客減少続く 県内の観光客は新型コロナウイルスの感染拡大で大幅な減少が続いている。東北運輸局のまとめによると、2020(令和2)年の県内延べ宿泊者数は19年から3割を超える減少となった。コロナ禍の長期化で今年も減少は続いており、感染が拡大した4~6月は19年との同月比でいずれも40%を超える減少だった。特に外国人宿泊者数の減少は顕著で、コロナ前との比較で8割超の減少が続く。