【福島県小選挙区・立候補者アンケート】コロナ対策や原発処理水

 

 31日投開票の第49回衆院選で、福島民友新聞社は県内5小選挙区に立候補した10人を対象にアンケートを行った。新型コロナウイルス感染症が確認されてから初めてとなる大型国政選挙。大きな争点の一つは「新型コロナ対策」で、感染防止と経済回復の両立に向けた訴えが問われる選挙戦となっている。

 ◆コロナ対策

 自民候補は感染防止対策としてワクチン接種の早期完了、3回目接種への準備とともに治療薬の開発・確保を打ち出す。1区の亀岡偉民候補は「新薬の許認可を素早くできる環境をつくる」、5区の吉野正芳候補は「治験も特例的に急ぎ、国の予算も積極的に投入する」と強調。2区の根本匠候補は「国と地方の役割分担を見直し、病床や人材、対応力を確保する枠組みを整備する」とした。

 経済対策について3区の上杉謙太郎候補は「成長と分配、東京一極集中から地方分散への転換などに合わせた大規模な施策を検討」、4区の菅家一郎候補は「デジタルなどの成長分野や女性、若者など多様な人材への投資を促す」とした。

 野党候補は感染拡大防止に向け、ワクチンの3回目接種に加え、PCR検査体制の強化を訴える。2区の立民・馬場雄基候補は「水際対策を徹底し、感染状況を正確に把握する」ことが必要と指摘。5区の共産・熊谷智候補も「無料のPCR検査による早期発見・隔離保護で抑え込む」とした。3区の立民・玄葉光一郎候補は「家庭内感染や重症化を防ぐため、入院できない場合でも原則宿泊療養とし『在宅療養者ゼロ』を目指すべきだ」とした。

 経済対策については立民で1区の金子恵美候補、4区の小熊慎司候補とも「年収1千万円程度以下の所得税実質免除と税率5%への時限的な消費税減税」と具体的対策を訴えた。

 政府のこれまでの新型コロナ対策への評価として、自民候補が80~95点(1人は点数では測れないと回答)だった一方で、野党候補は0~50点とした。

 ◆政府の処理水海洋放出方針

 アンケートでは東京電力福島第1原発で発生する処理水を巡る政府の海洋放出方針についても是非を尋ねた。賛成が1人、反対が4人、どちらとも言えないが2人、その他が3人だった。

 唯一、賛成としたのは5区の自民・吉野正芳候補。「地元の心情を思うと悩ましいが、風評被害対策として十分な予算措置をさせ、また外交努力を続けて諸外国の理解を得るよう督励し、本県出身者としての務めを果たしたい」とした。

 一方、反対はいずれも野党候補。5区の共産・熊谷智候補は「試験操業で地道に積み上げてきた漁業者の努力を台無しにする」として海洋放出を中止し、陸上保管の継続と地下水流入を防ぐための抜本対策を求めた。

 ◆復興施策

 これまでの復興施策については、自民候補が50~100点(1人は点数では測れない)、野党候補が0~70点と評価が分かれた。ただ、「浜通りでは復興は進んでおらず、これからの取り組みが必要」(1区の自民・亀岡偉民候補)、「復興庁の設置10年延長は復興が道半ばの証し」(4区の自民・菅家一郎候補)、「人、心の復興や生活再建などの真の復興はこれから」(1区の立憲民主・金子恵美候補)、「国内外での発信不足で風評被害は根強い」(2区の立民・馬場雄基候補)と、本県の復興が途上であるとの認識はほぼ一致した。

 その上で、本県の復興を進める上で特に重要な事項として「全て」を選んだ候補も含め、8人が「廃炉」、6人が「風評対策」を挙げた。4区の立民・小熊慎司候補は「廃炉をはじめ課題は山積。そのたびに風評対策が必要」と指摘、3区の自民・上杉謙太郎候補は「農産物の輸入規制解除や外国人観光客の呼び込みが必要」と具体的な取り組みを示した。5区の共産・熊谷智候補は「その他」として「避難者支援」を挙げ「最後の1人まで支援する立場を堅持すること」とした。

 「産業振興」と回答したのは5人。福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想の中核として浜通りに整備される国際教育研究拠点について、5区の自民・吉野正芳候補は「世界に誇れる新技術の発信基地としなければならない」、2区の自民・根本匠候補は「東北の創造的復興の中核拠点として創設する」と意義を強調した。

 特定復興再生拠点区域(復興拠点)から外れた地域への対応を指摘する意見も。廃炉に加え「除染」を挙げた3区の立民・玄葉光一郎候補は「関係自治体の求める(山林を除く)全ての地域の除染が必要」と訴えた。

 また「国内原発ゼロ」への賛否は賛成が4人、反対が2人で、「どちらとも言えない」が1人、「その他」が3人だった。賛成はいずれも野党候補だった一方、自民は「現状では再稼働やむなし」との認識を示す候補が多かった。
 
 ◆憲法改正

 憲法改正の必要性については賛成が6人、反対が1人で、「どちらとも言えない」が2人、その他が1人だった。自民候補は5人全員が賛成した一方、野党は候補によって賛否が分かれる形となった。
 
 ◆選択的夫婦別姓

 選択的夫婦別姓の賛否については、野党候補は5人とも賛成したが、自民は反対2人、「どちらとも言えない」が2人、その他1人となった。立憲民主、共産両党などは衆院選の公約に盛り込んだものの、自民は候補によって考え方が異なっている状況だ。
 
 ◆自由回答

 アンケートでは各設問のほか、自由回答で人口減少対策について尋ねた。子育てや教育への支援の充実を目指す意見が多数を占めた。

 亀岡候補は「家族と生きていく社会づくりを当たり前にできる教育が必要」と指摘し、上杉候補は「まとまった支給額での新たな子育て教育手当制度の創設」、金子候補は「子どもを産み、育てやすい環境整備の予算増」と予算の拡充が必要との認識を示した。

 また、移住の促進に向け「企業の本社機能移転のための大胆な誘導策」(玄葉候補)や、「地域の『資源』に付加価値を付けて魅力を醸し出し、関係・交流人口に努める」(吉野候補)と人口の社会増を促す施策を挙げる候補もいた。

 自由回答では、日本の経済力を取り戻すための施策についても聞いた。

 自民候補からは技術力の向上、流出防止に向け「基礎研究分野に光を当て、各研究機関の研究開発費を確保していく」(菅家候補)「技術の流出を防ぐためにも『経済安全保障戦略』を早急に策定する」(根本候補)などの意見が出た。

 野党候補からは「国内の研究者、技術者の環境整備と十分な財政支援に力を入れる」(熊谷候補)との声とともに、労働者を支える仕組みづくりが必要との声が上がった。小熊候補は「税制改正や予算の集中的充当による所得の再配分」、馬場候補は「適正かつ公平な分配と将来へ安心できるセーフティーネットの構築」を訴えた。