【衆院選・有権者のまなざし】飲食店/戻らぬ客足、支援の手を

 
複雑な思いを抱えながら、グラスや酒瓶を磨き来客を待つ服部さん=郡山市

 県内有数の繁華街がある郡山市のJR郡山駅前。新型コロナウイルスの感染拡大後、夜の街の人影はめっきりと減った。飲食店などは昨年から4度の時短営業を強いられ、感染者の急増でまん延防止等重点措置が適用された8月23日からは1カ月間、アルコール類の提供もできなくなった。現在は規制が解除されたが、コロナ前のにぎわいとは程遠く、飲食店は先行きを見通せないでいる。

 売り上げ8割減

 「ようやくお客さまの顔を見られるようになったのはうれしいが、今後の客足は気掛かりだ」。駅前でバーを経営する服部幸介さん(41)は複雑な思いでカウンターに立つ。

 服部さんは通常営業ができない間も、店の存続のためあらゆる策を練ってきた。今春、3度目の時短要請が出てからは日中に店舗の前でジューススタンドを始めた。ほかにも系列店舗をワーキングスペースとして貸し出すなどバーとは別の道で経営を保った。それでも7~9月の時短要請とまん延防止措置は経営を直撃した。客足はコロナ前と比べて9割減少し、売り上げも8割減った。

 「正直、震災の時よりも厳しい」。10年前の東日本大震災時には店内のグラスや酒瓶が割れ、風評被害で客足も一時伸び悩んだが、それでも「乗り越えられるという希望があった」と振り返る。しかし今回は「前例もない事態で、先が見えない不安ばかり募る」と話す。

 郡山飲食業組合の青年部長を務め、同業の若手経営者と話す機会も多い。だが「ポジティブな話が聞こえてくることはほとんどない」という。各事業所の努力だけでは経営を続けていくことが難しく、「このような時だからこそ政治による支援が必要だ」と訴える。コロナ前の売り上げに戻るまで、店舗の家賃補助や雇用調整助成金の継続などによる飲食業の下支えを求める。

 国民の声拾って

 組合ではこれまでにも飲食店の支援に向けて市議会議員を招いた検討会や、署名活動などを行ってきた。しかし、市だけでの対応には限界がある。服部さんは「国や県、市の縦割り、横割りを取り払った支援の在り方を探ってほしい」と考え、衆院選の各候補者、政党の訴えに耳を澄ます。「スローガンだけでなく、国民の声を拾ってもらいたい。不安なく仕事に向き合えるようになることが一番」と1票に望みを託す。(千葉あすか)

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 県内コロナ倒産19社 東京商工リサーチ郡山支店の集計によると、新型コロナウイルス感染拡大の影響で倒産した県内企業は9月末現在で19社に上る。全体の件数は減少傾向にあり、国などの資金繰り支援策で一定程度は抑制されているが、今後の感染状況によるところも大きく、見通しは不透明だ。同支店は「新政権の景気刺激策、助成制度などに大きく影響される。原油高なども続いており、引き続き注視が必要だ」と指摘する。