【衆院選・識者に聞く】コロナ対策/県医師会副会長・星北斗氏

 
「再び感染が拡大したときに迅速に医療人材を確保できる仕組みが必要だ」と話す星副会長

 衆院選は31日の投開票に向け後半戦に入り、県内5小選挙区の舌戦は激しさを増している。新型コロナウイルス対策、傷んだ経済の立て直しをはじめ、本県では復興施策も問われるべき争点だ。各分野で山積する課題の解決に向けた国政の役割などを学識者に聞いた。

 病床確保やワクチン接種などの新型コロナウイルス対策がうまくいっているかどうか、政治の世界で盛んに議論されているが、本県に限って言えば全体としてはとてもうまくいっていると言えると思う。何より、県民の協力があったためだ。新型コロナの最前線で対応してきて、そう強く感じる。ただ改善すべき点もある。

 現在の医療体制には、感染が拡大したときに迅速に看護師などの人材を確保する仕組みが欠けている。「第6波」へ備えるため早急に構築するべきだ。普段は医療機関で仕事をしていないが、感染が拡大しスタッフが必要になったら働いてくれる看護師らが必要。かつて、資格を持つが働いていない「潜在看護師」にコロナ対応の協力を求めたことがあったが、協力者はあまりいなかった。感染症の知識がなく訓練もしていないという理由で二の足を踏む人が多かったのだと思う。

 県内でも新型コロナの院内感染が何度か起きているが、感染症を専門とする看護師、医師の数が足りていないのが一因。いざというときの人材をどう確保するか、検討が必要だ。平時から感染症についてのトレーニングを積んでおくべきかもしれない。

 新型コロナワクチンの3回目接種はやるべきだ。医療従事者からということになると思う。スピード感が増すことを期待する。これからの冬場は、心筋梗塞や脳梗塞などの病気が増える季節。救急などの病院機能が新型コロナでそがれてしまうのは痛い。新型コロナ医療を横目で見ながら一般医療をやっていかなければならず、医療機関の苦労は続くだろう。

 一方、傷ついた経済の回復が叫ばれている。人の移動そのものが感染を拡大させるわけではないので、観光などをむやみに制限する理由はない。必要なのは、マスク着用や、体調不良時の行動の自制など、基本的な感染対策を続けること。逆に言えば、対策を講じるならば経済を活性化させる方向に進むのはいいと思う。

 コロナ禍で受診控えが進んだ。そもそも受診する必要がなかったケースもあるだろうが、病院に行かない間に病気が進行してしまっている可能性もあり、注意が必要。具合が悪かったら迷わず受診するべきだ。受診控えが進んだこの状況をきちんと検証すべきだと思う。これまでの新型コロナ対策の経験を上手にこれからの対策に生かすことができる政治を望んでいる。

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 ほし・ほくと 郡山市出身。東邦大医学部卒。医系技官として旧厚生省入省。ハーバード大公衆衛生大学院客員研究員などを務めた。現在は星総合病院理事長。県医師会では2015(平成27)年から副会長を務め、新型コロナウイルス対策を担当している。57歳。