コロナ、経済重視鮮明 衆院選・首都圏党首演説、福島民友記者ルポ

 
4年ぶりの政権選択選挙で党首の訴えに聞き入る有権者=都内

 31日の投開票に向け終盤戦に入った衆院選で、9党の党首による街頭演説が熱を帯びている。10年を経た東日本大震災や東京電力福島第1原発事故に触れる場面はほとんどなく、新型コロナウイルス感染拡大からの経済再生や危機管理、社会の在り方を重視する姿勢が鮮明だ。首都圏での演説を取材した。

 公職選挙法の政党要件を満たす9党の党首が、公示日の19日に放った第一声を除き、首都圏で行った街頭演説を1回ずつ取材した。

 26日夕、今回の選挙戦で、都内最初の街頭演説に臨んだ岸田文雄首相(自民党総裁)は看板政策である「新しい資本主義」を念頭にした上で「一人一人の所得、給料を引き上げる形で、できるだけ多くの人たちに成長を実感してもらえる経済をつくっていく」と声を張り上げた。

 給料や税を巡っては、国民生活に直結するだけに、訴えに重きを置く党首が目立った。国民民主党の玉木雄一郎代表は「積極財政で給料が上がる経済を取り戻す。教育国債を発行することで科学技術関連の予算を倍増させ、人づくりに投資する」と具体策を示した。

 社民党の福島瑞穂党首は自民党政治が大企業などを優遇し続けたため、格差が拡大したと主張。「税金を医療、介護、福祉、教育に振り分けて再建していく」と訴えた。れいわ新選組の山本太郎代表は消費税廃止を打ち出し「20兆円の国債を発行し、大企業への累進課税の導入により財源は賄える」と持論を展開する。

 「原発事故で当初の想定より広い範囲の皆さんに避難をお願いした苦い経験がある」。立憲民主党の枝野幸男代表は旧民主党政権の反省に言及。北朝鮮の弾道ミサイル発射を巡る岸田内閣の対応に「危機管理意識が足りないことが露呈した。感染拡大の『6波』を止められるのか」と批判した。

 コロナ対応を巡って、日本維新の会の松井一郎代表は「困っている人を把握しているのは市区町村だ。国が財源を渡し、市区町村長が判断できるようにすべきだ」と構造改革を求めた。

 公明党の山口那津男代表は、気候変動に対応した防災対策の強化を唱える。東日本台風に触れ「防災と国土強靱(きょうじん)化を加速させる必要がある」と語り、遊水池の追加整備など実績を強調した。

 気候変動にも関わるエネルギー政策では、共産党の志位和夫委員長が「省エネと再エネの拡大で2030年までに石炭火力発電所を廃止し、原発も直ちにゼロにすべきだ」と主張した。

 「NHKと裁判してる党弁護士法72条違反で」の立花孝志党首は「NHKのスクランブル放送化を求める国民の声は多い」と述べた。(東京支社・桑田広久)

9党党首の遊説取材日と場所

自民党 26日 東京・西武田無駅前
立憲民主党 19日 東京・JR阿佐ケ谷駅前
公明党 21日 東京・江北平成公園
共産党 20日 神奈川・JR桜木町駅前広場
日本維新の会 20日 東京・JR目黒駅前
国民民主党 21日 東京・JR亀有駅前
れいわ新選組 20日 東京・JR高田馬場駅前
社民党 21日 神奈川・JR大磯駅前
NHK党※ 26日 東京・JR新橋駅前SL広場
※NHKと裁判してる党弁護士法72条違反で