【衆院選・識者に聞く】デジタル化/会津大理事・岩瀬次郎氏

 
「各技術の相互連携を進めるべきだ」と提言する岩瀬氏

 日本は「デジタル後進国」だ。スイスの国際経営開発研究所(IMD)が昨年9月に発表した世界デジタル競争力ランキングで日本は27位。国内総生産(GDP)が3位なのに比べると、低い評価にとどまった。

 技術が高い分野もある。東日本大震災の発生時、5本の新幹線が福島―岩手間を走っていたが、「早期地震検知警報システム」が作動し、揺れが来る前にブレーキをかけていたため、事故なく停止できた。

 ただ、デジタル化(DX)が進んでいる分野と、進んでいない分野の差が激しい。政府は昨年、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて全国民に一律10万円を支給したが、全国各地で遅れや混乱が報じられた。マイナンバーと住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)のデータを連携させることができれば、もっとスムーズに支給できたはずだ。

 昨年6月には、大手製薬企業がオンラインで株主総会を開こうとしたが、会社法が会場設置を求めているため実現できなかった。この問題は今年6月の法改正で解消されたが、DXを進めるには技術の進歩だけでなく、法整備も必要だということを物語っている。

 日本のデジタル化は総じて「縦割り」で、組織横断的な連携が乏しい。この課題を解決するために設置されたのがデジタル庁だ。デジタル庁は国のDX施策をつかさどる組織で、各省庁のDXに横串を通す役割を担うとされている。まだ発足したばかりで評価はできないが、今後の働きに期待したい。

 DXが進めば、東京一極集中ではなく、地方でも仕事を引き受けられる状況に変わっていくだろう。本県では、内閣府の「スーパーシティ」の特区に応募している会津若松市をはじめ各自治体がDXを進めている上、会津大が情報通信技術(ICT)を持つ人材を輩出している。郡山市にはふくしま医療機器開発支援センターもある。(浜通りに新産業の集積を図る)「福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想」に盛り込まれているロボット、医療は今後、DXが重要になる分野だ。

 福島の技術は全国だけでなく、世界に誇れる宝物だ。しかし現在は、それぞれの取り組みがばらばらに進んでいる。デジタル技術を有効活用して相互連携を進めるべきだ。連携を強めていければ、本県は今後、高い競争力を発揮できるに違いない。

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 いわせ・じろう 北海道出身。京大大学院修了。日本IBM入社。企業留学で米国エール大大学院修了。2007年に会津大理事、13年に同大産学イノベーションセンター長、復興支援センター長に就いた。今年9月、県の最高デジタル責任者(CDO)補佐官に委嘱された