岸田政権、復興政策へ本格始動 自民、海洋放出丁寧な説明が鍵

 

 衆院選で岸田政権が信任を得たことで、復興政策が本格的に動きだす。喫緊の課題の一つに、東京電力福島第1原発で発生する処理水の海洋放出方針への対応が挙げられ、安全確保と風評を抑えるための具体策の早期実行が求められる。

 自民党は衆院選の公約で、漁業者らへの支援や、水産物の需要が落ち込む事態に備えた基金の創設を掲げており、予算規模が焦点だ。

 漁業者を中心に、海洋放出に伴う新たな風評を懸念する声は根強い。政府と東電は2023年春ごろに放出を始める計画だが、国内外の幅広い関係者に丁寧な説明を尽くし、理解を得られるかどうかが鍵を握る。

 一方、立憲民主党は本県関係衆院議員が公示前と比べ1人増の4人になり、国会論戦を通じた復興政策への発言力が一定程度強まるとみられる。立民は衆院選に合わせた政策集で、海洋放出方針の「見直し」にかじを切り、政府、与党をけん制する。野党第1党としてチェック機能を果たせるかどうかが試される。

 原発事故による被災地を巡っては、政府が浜通りに整備を計画する国際教育研究拠点の具体化が課題となる。帰還困難区域のうち、特定復興再生拠点区域(復興拠点)から外れた地域について、20年代に希望する全ての人の帰還を目指す政府方針が決まったが、意向把握の方法や除染の範囲など不透明な部分が残る。沖縄北方担当相を兼務する西銘(にしめ)恒三郎復興相が復興の司令塔として指導力を発揮できるか、真価が問われる。(桑田広久)