【いわきFC・JFLへの軌跡】理想の環境...選ばれるチームへ

 
選手たちはいわきFCステーションで食事をとる。「食事を楽しみながら体づくりできる」と選手からも好評だ

 本格始動4年目で日本フットボールリーグ(JFL)昇格を確実としたいわきFC。チームが取り組むスポーツ科学に基づく身体能力の強化など、選手にとって理想的な環境を備えたいわきは"選ばれるチーム"となりつつある。

 「今年は自分たちの力を出し切れた」。JFL昇格が確実となった22日の地域チャンピオンズリーグ(地域CL)決勝ラウンド第2節。チーム在籍4年目のFW吉田知樹(21)は、この4年間の手応えを口にした。

 チームは年を重ねるごとに、目の前の強敵を乗り越えてきた。天皇杯県代表決定戦では、始動初年度となった2016(平成28)年こそJ3福島ユナイテッドFCに敗れたが、17年以降は代表決定戦で3連勝。JFLへの飛び級制度があった17年の全国社会人選手権で敗れたおこしやす京都AC(関西リーグ1部)にも、地域CL第2節で快勝した。

 年々力を増してきたチームを支えるのは「走り勝つ」ことを実現するための徹底した肉体強化。引き締まった肉体を持った選手がピッチを縦横に走り続ける。積み重ねてきた肉体強化のノウハウは、本拠地であるいわき市の市民の健康づくりにも活用され始めている。

 選手の育成環境も大きく充実した。16年11月に専用グラウンドのいわきFCフィールド、17年6月にはジムなどを備えたクラブハウスのいわきFCパークがそれぞれ開業し、選手の遺伝子の傾向に基づいた特別のトレーニングなどを展開してきた。

 栄養サポート

 19年にはサッカー日本代表の専属シェフを務めた西芳照さんが総料理長を務めるいわきFCステーションを設立。スポーツ栄養学に基づき栄養士が考案したメニューで、選手が練習の直後などに効率よく栄養を補給できる。今季は選手の精神的な疲労回復に「香り」が役立つかの検証にも取り組むなど、多角的で先進的な試みを続けている。

 こういった環境が、クラブに将来性のある選手を呼び込む要因にもなってきた。今年1月の新体制発表会。全国高校選手権を制した青森山田高で活躍したバスケス・バイロン(19)は「いわきで身体能力を鍛えて、世界に通用する選手になりたい」と語った。バイロンは今ではチームの主力選手にまで成長。「競り合いで倒されづらくなった」と体を鍛え抜いた成果を語った。