浜通りに力を...『躍動』感謝の勝利 いわきFC・JFL開幕戦

 
【いわきFC―奈良クラブ】開幕戦を勝利し喜ぶいわきFCイレブン=18日午後、広野町・Jヴィレッジスタジアム

 広野町のJヴィレッジスタジアムで18日に行われたサッカーJFL開幕戦。初戦を鮮やかな逆転劇で飾ったいわきFCは目標のJ3昇格へ一歩を踏み出した。「全国に浜通りの元気を発信する」。本格始動以来、復興から成長を掲げ、今季、いわきから双葉郡へとホームタウンを広げたチームの新たな挑戦が幕を開けた。

 90分間走り続けた。地域リーグから階段を上りアマチュア最高峰の全国舞台でつかんだ最初の1勝に、選手の表情がほころんだ。選手会長のMF平沢俊輔(26)は「開幕をJヴィレッジで迎えることに大きな意味がある。勝てて良かった」と振り返った。

 選手たちは試合前、田村雄三監督(37)の発案で、震災直後にコンクリートで覆われたJヴィレッジが、青々としたピッチへと変わっていく写真を見た。「復興したこのピッチで、感謝を伝えよう」。気持ちは一つになった。

 中でも震災当時にJFAアカデミー福島に在籍していた平沢にとってここは思い入れの強い場所だ。「震災を経験した同じ境遇の人に、何かを与えられるプレーをする」と誓って試合に臨んだ。「応援してくれる人と昇格して一緒に喜びたい」と思いを強める。

 「選手が辛抱強く戦った」。田村監督は満足そうに振り返った。感染症の影響で試合数が15試合に半減した今季は「勝ち点3」の重みが増す。同じ「Jリーグ百年構想クラブ」でJ昇格を目指すライバルの奈良クラブを相手に幸先よく勝ち点をつかみ「絶対に勝つと意気込んでいた。みんなの思いがゴールに結び付いた」と総括した。

 チームを運営するいわきスポーツクラブの大倉智社長(51)は今季、「心揺さぶるフットボールを全国で見せることでいわき市、双葉郡、そして福島県が前に進んでいることを示したい」と、JFLを勝ち抜いてJに昇格する意味を繰り返し強調してきた。苦しんでつかんだ逆転勝利で、5年間貫いてきた「走り続けるサッカー」の躍動感を改めて全国に発信した。

 一方、無人のスタンドにはサポーターが事前購入したチームのロゴ入りの真っ赤なタオルが掲げられ、録音した応援歌が響いた。「サポーターの支えがあるから士気が上がる。大切な存在」と田村監督。「初戦で逆転勝ちして『持っている』と感じた。今後も自分たちのサッカーをする」。この勢いでサポーターとともにJ昇格へ突き進む。