「浜の夢」共にJの舞台へ 復興の象徴・Jヴィレッジで決めた

 
勝利を決めサポーターらとJ3昇格内定を喜ぶいわきFCイレブンら=広野町・Jヴィレッジスタジアム

 浜通り、そして県内のサッカーファンに夢を与えてきたいわきFCは、3日のホームゲームでついにJ3昇格を勝ち取った。会場となったJヴィレッジスタジアム(広野町)には、今季最多の2014人の観客が集い、ピッチで躍動する選手の背中を後押しした。「来季はJの舞台で」。選手とサポーターは喜びとともに、さらなるチームの躍進に思いをはせていた。

 「これは偶然ではなく、必然なんだ」。田村雄三監督は、大一番に挑む選手らを力強く送り出した。2019年にJFL昇格を決めた試合も、Jヴィレッジスタジアムが会場だった。かつては東京電力福島第1原発事故の対応拠点として使われていたJヴィレッジ。その再開は復興のシンボルとして取り上げられた。東日本大震災からの復興を理念とするチームにとって、「特別な場所」にほかならなかった。

 いわきFCは、筋力トレーニングや栄養管理を重視した選手強化で、県社会人2部からリーグ昇格を重ねてきた。天皇杯などでも活躍し、順調に歩みを進めてきたが、JFL初挑戦の昨季は最終戦で敗れてJ3入りを逃した。選手らは、鍛え上げられた体に「今回こそは」という強い意志を持って、ピッチに臨んだ。

 相手は東京武蔵野ユナイテッドFC。来場者は、新型コロナウイルスの感染防止対策で声援は送れなかったが、手拍子で選手のワンプレー、ワンプレーに思いを託した。

 いわきスポーツクラブの大倉智社長は「これまでの積み重ねに共感してもらった。多くのサポーターが詰め掛けてくれたことが一番うれしい」と語った。スコアは3―1、試合終了のホイッスルとともに、歓喜の瞬間が訪れた。

 選手らも拳を握りしめるなどして喜びを表現した。在籍6年目のFW平岡将豪は、JFAアカデミー福島出身で東日本大震災を経験しており、本県復興にかける思いはひときわ強い。「サッカーを通して、被災地の元気を発信し復興に貢献したい。だからこそ勝ち続けていかなければならない」と、使命感を口にした。