いわきFC、堂々頂点 勇退の田村監督、3度宙舞う

 
試合後、現地に駆け付けたサポーターと喜びを分かち合う選手たち=三重県鈴鹿市・AGF鈴鹿陸上競技場

 サッカーJFLに参入2年目で悲願の優勝を決め、いわきFCの選手やスタッフ、サポーターの熱気は最高潮に達した。アウェーの三重県鈴鹿市で27日行われた第33節で、鈴鹿ポイントゲッターズを4―1で破る快勝で頂点に立った。昨季7位の悔しさをぶつけて優勝をつかんだ選手たちは、多くの人たちと喜びを分かち合った。

 優勝決定後、今季限りで勇退する田村雄三監督(38)の周りには選手の輪ができ、3度の胴上げでもみくちゃにされた。

 「田村監督は選手たちに気付きを与えてくれた。『このままでは駄目だ』と思いながら1年間プレーさせてくれた」。こう話したFW鈴木翔大(28)ら選手たちは、5年間率いてくれた感謝の思いを胴上げに込めた。

 田村監督はJリーグで指揮を執るために必要なS級ライセンスを持っていないため退任する。ただ、優勝とJ3昇格に導いた手腕が認められ、来季もクラブに残り、強化部で主要な役目を担う予定だ。

 人生初の胴上げに「怖かった」と照れくさそうに笑った田村監督。今季を振り返りながら「将来ある選手たちに『一生懸命戦う』というベースを教えてきたつもり。そこはできたのかな」と控えめに喜びを表現した。

 優勝したいわきは、同一シーズンでJFL優勝とJリーグ昇格を決めた初のクラブとなった。JFL王者としてJリーグに参入するのは、2013年度王者のAC長野パルセイロ(J3)以来8年ぶりの快挙だ。

 「胸を張って良いことだと思う」。FW鈴木は誇らしげに語った。昨季はあと一歩のところで甘さがあったと振り返るMF山下優人(25)は「昨シーズンがあったからこそ、今年は圧倒して優勝することを目標にしていた」と優勝の喜びに浸った。

サポーター、夢の瞬間

 悲願の瞬間を見届けたサポーターは喜びを爆発させた。「優勝を信じていたが、優勝した瞬間はやっぱりうれしかった」。サポーター歴5年という、いわき市出身で東京都の会社員百瀬未紗子さん(34)は満面の笑みで語った。

 「Jリーグの応援スタンドはチームカラー一色になる。いわきでもその光景を見たいと思って応援してきた」と話す百瀬さん。「その光景に少しずつ近づいている気がする。きょうも多くのサポーターが集まった光景が見られてうれしかった」と声を弾ませた。

 スタンドには、各地からいわきのサポーター約80人が駆け付けた。大きな旗を振って応援したいわき市の会社員四家英さん(42)は「選手と一緒に戦っているつもりで応援した。優勝してくれた選手たちが誇らしい」と目を細め、「これからも、子どもからお年寄りまで多くの人に夢を与えるクラブでいてほしい」と期待した。

内堀知事「力強い戦い」

 いわきFCの優勝を受け、内堀雅雄知事と内田広之いわき市長は27日、祝福のコメントを発表した。内堀知事は「昨シーズンの悔しさをばねに堂々とした力強い戦いぶりで見事優勝し、県民に勇気と感動を与えてくれた」とたたえた。

 内田市長は「いわきFCの名が全国に轟(とどろ)くことは、大変誇らしく感じる。J3でもさらに高みを目指し、躍動を期待している」とした。