【Jへ翔る(下)】選手と市民もっと近く 街全体巻き込み関係強化

 
J1ベガルタ仙台の試合会場を視察する参加者

 優勝を射程圏内としていた今月初旬、いわきFCのクラブ職員と関係者らは仙台市にいた。目的はすでにサッカーと野球、バスケットボールの三つのプロスポーツが根付いた地域の先行事例を学ぶためだ。

 企画したのはクラブをはじめ、いわき市やいわき商工会議所など75の機関でつくる「スポーツによる人・まちづくり推進協議会」。協議会は、体力トレーニングの知識を持つクラブと連携し、市民の健康づくりにつながるイベントを開催するなどして、地域とクラブの関係を深める役割を担っている。

 ただ、この2年間は新型コロナウイルスの影響もあり、その役割を最大限に発揮できなかった。だからこそ、仙台市の視察にはJリーグ入会を契機に、地域とクラブをつなぐ取り組みを強化しようとする熱意が込められていた。

 ユアテックスタジアム仙台でのJ1ベガルタ仙台の公式戦を見学したり、市職員の案内を受けながらJR仙台駅近くの商店街を巡ったりした一行。

 そこで見えてきたのは、商店街や地元企業を巻き込んだ仕掛けだ。選手を応援する看板を街中に設置したり、選手と市民が触れ合う機会を設けたりしていた。

 「市民は選手の顔が分からないと観戦に来ない」。視察の最後に設けられた意見交換会では、元Jリーガーで日本代表でも活躍した森山泰行さん(52)がこう助言した。かつて岐阜FC取締役として地域に密着したクラブ運営のため苦心した経験を持つ森山さんの言葉に、多くの参加者がうなずいていた。

 視察後、参加者からは意欲的な発言が相次いだ。「コロナの影響で(いわきでは)市民と選手の距離を近づける取り組みができていない」「仙台の商店街の人たちはクラブのことを熱く語っていた。いわきでも街全体を巻き込む取り組みができるはずだ」

 Jリーグという新たなステージで、さらに地域とクラブが関係を深めることができるのか。今後の取り組みが注目される。