いわきFC・有田稜がJ3のMVP ベストイレブンには5人選出

 
(写真上)MVPとベストイレブン、得点王に輝いた有田(写真下)ベストイレブンに選ばれた(左から)山下、日高、家泉、有田、嵯峨

 Jリーグは21日、今季のJ3表彰を行い、チームのJ3優勝とJ2昇格に貢献したいわきFCのFW有田稜(23)が最優秀選手賞(MVP)に選ばれた。ベストイレブンには、いわきから有田とMF山下優人(26)、MF日高大(27)、MF嵯峨理久(24)、DF家泉怜依(22)の5人が選出された。

 有田は今季加入した大卒ルーキー。後半戦から先発に定着し17得点を挙げて得点王に輝き、優勝の立役者の一人となった。記者会見で有田は「いわきFCに関わる全ての人に感謝している。J2でどれだけ通用するのか挑戦したい」と意気込んだ。優勝監督賞には今季から指揮を執る村主博正監督が選ばれた。

 諦めかけたプロ...1年目で花開く

 最優秀選手賞(MVP)に選出された得点王のFW有田は「いわきFCに関わる方、そして家族に感謝している」と話し、ピッチ上では見せない柔和な表情を見せた。

 得点王の活躍でチームを力強くけん引した有田は「プロになった自分を一番近くで支えてくれたのは母と兄。結果で恩返しをしたかったので(受賞は)うれしい」と感謝を口にした。

 プロ1年目で輝かしい成績を収めたが、実はプロ入りは諦めていた。理由は苦労して育ててくれた母親の近くで「親孝行し、早く楽をさせてあげたかった」からだ。

 小学校1年からサッカーを始め、中学時代は強豪クラブでプレー。多くの強豪高校からの誘いを断り、手に職を付けようと地元・福岡県の工業高校に進学してサッカーに打ち込んだ。

 プロへの憧れを秘めて就職活動を考える中、母親から「大学でサッカーを頑張れ」、2歳上の兄から「オカンのことは大丈夫」と後押しされ、国士舘大に進学した。

 大学時代は度重なるけがでほぼ試合に出場できなかったが、4年になって関東大学リーグで2桁得点を記録して注目を浴び、真っ先にオファーしてきたいわきFCへの加入を決めた。

 「試合に出られなかったり、練習も厳しくて苦しいことが多かった」と今季を振り返る有田。第3節の愛媛戦で見せた最初のプレーで決勝ゴールを決めて鮮烈なJデビューを飾ったが、当時の評価は「安定感がなく、フィジカルも弱く、簡単に倒れる」とマイナス面が大きく、前半戦は途中出場が続いていた。

 先発に定着したのは後半戦からだ。「監督やスタッフから課題を指摘してもらい、毎日フィジカルトレーニングを積み重ねて克服したことが大きい。夏ごろから得点できる自信がついた」と話す。

 後半戦には5試合連続得点で一挙8点を決めるなど成長した姿を見せた。有田は「J2では強度が上がる中、もっと強くならなければならない」と向上心をのぞかせ、「J2で2桁得点を目指し、家族にいい報告をしたい」と意気込んだ。

 ベストイレブン、いわきの快進撃支える

 有田のほかにベストイレブンに選ばれたのは、MF山下、MF日高、MF嵯峨、DF家泉の4人。

 山下はチーム唯一の全試合フル出場を達成し、攻守のバランスを取るチームの屋台骨を担った。日高は左サイドバックとして31試合で5ゴール5アシストを記録した。

 嵯峨は33試合に出場。右のサイドバックとサイドハーフの両方をこなし、5ゴール9アシストの活躍を見せた。家泉は不動のセンターバックとして31試合に出場し、1得点を挙げた。

 山下「来季は謙虚に貪欲に」

 チームで戦う上でのベースを(プレーで)表現できた。村主博正監督が目指すサッカーを全員が共有し、1年間積み上げることで優勝できた。来季は厳しい戦いが待っているが、謙虚に貪欲に、そして前にプレーする。自分たちがどれだけ通用するのか挑戦したい。

 日高「得点関わる目標達成」

 サイドを駆け抜けるスピードやクロスボールが評価された。今季はゴールやアシストで10点以上に関わる目標を達成できた。フル出場はできなかったが、日々の練習を出し尽くすことができた。質が高いJ2で自分が通用するため成長する部分を見つけていきたい。

 嵯峨「勝利貢献常に心がけ」

 今季はサイドバックが多かったが積極的な攻撃参加が評価されたと思う。チームの勝利や昇格に貢献することを常に心がけた。もっとゴールやアシストでチームを救いたい。J2ではいわきのサッカーがどのぐらい通用するのか楽しみ。自信を持ってプレーしたい。

 家泉「高さ、対人プレー評価」

 長所の高さや対人のプレーが評価されたと思う。開幕当初は個人として守備を頑張ろうとの思いが強かったが、終盤にはチームの攻守に徹する意識に変わり成長できた。来季のJ2は、レベルがさらに上がるが、自分たちのスタイルを崩さずに良い成績を残したい。