【J3つかんだ頂点/中】いわき 村主体制、生きた中高指導経験

 
選手に戦術を仕込む村主監督(左から2人目)。就任1年目でチームを優勝に導いた=2月10日、いわき市・いわきFCフィールド

 いわきFCは平均年齢23.7歳(開幕時)の若いチームだ。J3優勝の背景には、若手の成長を支えたコーチ陣とクラブの一貫した強化方針があった。

 村主(すぐり)博正監督は、若手主体のいわきに必須の人材だった。クラブが新たな監督を探す際、「絶対条件」としたのは育成年代に対する指導経験。村主氏は、静岡県の浜松開成館中高でコーチの経験があり、白羽の矢が立った。

 村主監督は選手に対し、常に平常心で戦うこと、一喜一憂しないことなど、プロの心構えを言葉と背中で示してきた。今季J3ベストイレブン入りした5選手の内、FW有田稜とDF家泉怜依、MF嵯峨理久、MF山下優人の4選手が大卒生え抜き選手だったことは、クラブの育成力の高さを物語っている。指揮官の2季目の手腕に期待が高まる。

 また、クラブは今季、走りに特化した「スプリントコーチ」を新設し、数々のトップアスリートを指導する秋本真吾氏を招聘(しょうへい)。昨季はJFLで優勝を収めたが、選手の走行距離はJリーグの水準に達していないという課題があったためだ。

 効果はてき面だった。5月には選手のほぼ全員が最高速度を更新し、課題だった走行距離も昨季比で平均30%増加。「90分を効率よく走ること」(秋本コーチ)をテーマの一つに掲げて取り組んだ成果は、夏場からシーズン終盤にかけて顕著に表れた。優勝争いをする他のチームがプレー強度を落として失速していく中、強度と勝ち星を落とさなかったいわきが際立った。