いわきFC、東京Vとドロー 守備陣奮闘、13試合ぶり無失点

 
【東京V―いわき】東京VのMFバイロンとマッチアップするいわきのDF河村(左)=味の素スタジアム

 サッカーJ2第18節-。いわきFCは28日、アウェーの味の素スタジアム(東京都調布市)で2位東京ヴェルディと対戦し、0―0で引き分けた。いわきの通算成績は4勝4分け10敗。順位を一つ落として22チーム中21位。

 いわきは前半を無失点で折り返し、後半は攻勢を強め、カウンターで好機をつくった。後半22分、PKを獲得したが、FW有田稜が得点できず、猛攻を耐えて引き分けに持ち込んだ。

 いわきの次戦は6月3日。ホームのいわきグリーンフィールド(いわき市)で12位ロアッソ熊本と対戦する。午後1時開始予定。

東京V戦スコア

 【評】いわきは上位の東京Vを苦しめ、引き分けた。前半は左右にボールを動かして揺さぶりをかける東京Vに対し、いわきが守備で防ぐ展開。いわきは攻め込まれるたびにゴール前ではじき返し、無失点に抑えた。後半はいわきが敵陣でプレスをかけ始めたことで互いに攻め合ったが、決め手を欠いた。いわきは後半22分にカウンターからPKを獲得するも、FW有田が失敗した。(小磯佑輔)

 「キーマン」抑えた河村

 守備の奮闘が際立った。いわきは1―1で引き分けた前節の磐田戦に続き、堅い守りで相手の攻撃を封じ、13試合ぶりの無失点となった。フル出場でチームに貢献したDF河村匠(尚志高卒)は「自分が出る試合では初めて無失点に抑えられた。成長できている」と手応えを口にした。

 前半は自陣でじっと耐え、守りに専念。後半は相手のミスや運動量が落ちたと見るや、強気にボールを奪いにいき、攻めに転じた。象徴的だったのは後半22分。FW近藤慶一が敵陣で果敢にボールを奪取し、MF嵯峨理久のPK獲得につながった。

 苦戦続きだったリーグ序盤戦の反省が生きている。当初は武器の果敢なプレス守備を前面に押し出して戦ったが、レベルの高いJ2では通用しなかった。選手間の意思もずれて大量9失点した清水戦を機に、試合の状況に応じてプレスをかける戦術に転換。実力者ぞろいの磐田を苦しめたことで自信を深め、今節を迎えた。

 この日は東京Vのキーマン、MFバスケス・バイロンを苦しめたことも無失点の一因となった。ドリブルに自信を持つバイロンに河村が対峙。試合を通して自由にさせず、相手のサイド攻撃を防いだ。「成長を感じている」と村主監督も河村をたたえる。

 今後も熊本や山形、徳島など、ボールをつなぐチームとの対戦を控える。「今日の戦いがベースとなる」と副主将のDF遠藤凌。この日のような戦いを継続し、勝利につなげていく。(小磯佑輔)

 PK失敗の有田「下向かず点取る」

 「低くスピードのあるボールを蹴っていたら入っていた」。いわきのFW有田稜は後半23分、右上に少し浮いたPKが相手GKの好セーブに阻まれ、悔しさをあらわにした。

 J2で今季2番目に失点が少なかった東京Vの守備陣を揺さぶり、MF嵯峨理久がPKを獲得。「チーム一のストライカーに任せる」とキッカーを託されただけに「本当に申し訳ない。もっと責任感を持たなければならない」と唇をかんだ。

 それでも、昨季J3得点王への信頼は揺るがない。PKを外した直後、サポーターからは「有田コール」が響いた。村主監督も「この経験を今後のエネルギーにしてほしい」と期待する。有田は「ここで下を向かずに得点を取って恩返しをしたい」と誓った。

 バイロン、古巣に賛辞

 東京VのMFバスケス・バイロンは古巣との一戦を終え、「いわきのフィジカルを徹底したサッカーは相変わらず手ごわかった」と賛辞を贈った。

 いわきには2019~21年に所属。「いろいろな経験をさせてもらった。いわきの人は温かくて好き」と話すように、現在もいわきの試合をチェックし、昨冬にはいわき市を訪れたという。

 試合後、いわきサポーターにあいさつに向かうと、温かい拍手と所属当時の応援歌に包まれた。「(胸に)響くものがあった」とバイロン。いわきグリーンフィールドで再戦する8月19日の"凱旋試合"に向けて「次は絶対勝ちます」と決意を語った。