人とクマ「すみ分け」 草木刈り払いや餌撤去...福島県モデル事業

 

 福島県内でクマの目撃情報が相次ぐ中、県は人里近くの被害を抑えるモデル事業に取り組んでいる。クマの隠れ場所となる草木を刈り払うなど、餌を求めて人里に下りてくるクマを人の生活圏から遠ざける試みだ。県自然保護課は「駆除するだけでなく、人とクマの接触が減るように環境を整備し、人的被害を防いでいきたい」としている。

 ◆◇◇モデル地区設定

 東京電力福島第1原発事故後、本県では放射線への不安やクマ肉の出荷制限に伴い、住民の山林への立ち入りや狩猟者の活動が大幅に減った。県は、こうした状況からクマへの人間の圧力が弱まり、クマが人里に下りやすくなったと分析し、2017(平成29)年度から3カ年事業で、会津若松市東山地区や会津美里町岩渕地区、福島市佐原地区など県内7地区をモデル地区に設定、人の生活圏とクマの生息域のすみ分けを進めてきた。

 モデル地区では、住民と行政の担当者、専門家が地区内を巡り、クマを引き寄せやすい果樹やクマが隠れやすいやぶ、クマの足跡などを地図に落とし込み、情報を共有。必要に応じ草木を刈り払ったり、クマの餌になりやすい農地に廃棄された農作物を撤去したりするなど、クマが人の生活圏に侵入しにくい環境を整備してきた。

 また、生ごみを捨てるときは曜日と時間を守りクマの餌になることを避けるなど、住民自身もクマ対策を担う意識を高めた。県は「こうした取り組みが奏功し、モデル地区ではクマの目撃数が減るなど一定の結果に結び付いている」と手応えを口にする。

 ◇◆◇目撃は増加傾向

 県によると、クマは餌となるブナやドングリが不作の年に山を下りてくる傾向にあり、目撃数は年ごとに変動する。ただ、原発事故以降は全体の目撃件数が増加傾向にあるほか、春先の目撃が増えつつあり、県は「気候変動で冬眠から早く覚め、餌を探して人里に下りるケースが増えているのではないか」と分析する。

 ◇◇◆短期的な対策も

 県のツキノワグマ管理計画(第3期計画)の推計では、17年4月現在の生息数は2970頭に上る。人里に下りてきたクマは人的被害の防止のために捕獲が必要となるが、クマは繁殖力が弱く、駆除が進めば絶滅につながる可能性もあるとしている。

 県は本年度、会津若松市門田、北塩原村裏磐梯の2地区を新たにモデル地区に設定、継続となる7地区と合わせた9地区で事業を展開している。年度内に成果をまとめ、広域的な取り組みに発展させる考えだ。

 ただ成果につなげるには時間が必要だ。県自然保護課は「クマが出る地域では鈴をつけて外出したり、遭遇したら刺激せず後ずさりして逃げるなど対策を取ってほしい」と短期的な対策の必要性も強調する。