「大好きなソフトクリームで福島元気に」 震災機に農畜産応援

 
ソフトクリームを作る千葉清美さん=二本松市

 二本松市と大玉村の生乳を100%使ったソフトクリームが同村内で販売され、話題になっている。東日本大震災を機に地域の姿を見つめ直し、「無添加で安心、安全なものを提供したい」と同村の千葉清美さん(54)が製造を始めた。背景には他県から移住してきたからこそ気付く福島の良さと、「大好きなソフトクリームで大好きな福島を元気にしたい」という思いがある。

 専用の機械から搾り出される白いソフトクリーム「きよミルク」。口にすると濃厚で甘い味が広がる。やわらかく、すぐに溶けてしまうが、それには理由がある。「原材料は生乳とオーガニックシュガー、脱脂粉乳の3種類のみ。生乳を均質化せず、安定剤や乳化剤などを使用していないので、おなかを壊しにくく、生乳本来の甘味とコクを味わってもらえれば」。千葉さんは説明する。

 14年前に夫の仕事の関係で横浜市から移住した。人の良さや自然に触れ、福島のことが大好きになった。ソフトクリーム製造を始めようと思ったのは、東日本大震災がきっかけ。自宅のある大玉村周辺で農畜産業が衰退し、農地が荒れていく様子を目の当たりにして「好きな福島の田園風景が失われつつある。どうにかしなきゃ」と思った。

 自分が好きなソフトクリームで地域の農畜産業を活性化できないか。飲食業の経験がない中、講習会を受講するなどして、準備を進めた。

 原材料の生乳は地元産にこだわり、二本松市と大玉村の農家から仕入れる。二本松市に製造工場を構え、今年1月に「あだたらのちち」株式会社を立ち上げた。3月末から国道4号沿いの「あだたらの里直売所」の隣にある同村大山の「お食事処たまちゃん」で販売を開始。行動に移し始めてから約2年半が経過していた。人も、資金も、知識もない中からのスタート。その間、さまざまな苦労があったという。開業を諦めなかったのは「福島を何とかしたい」という強い思いがあったからだ。

 9月中には製造工場で対面販売を開始する予定。将来的には地域の食材を使ったカフェなどで地域を盛り上げ、若い世代が「移住したい」「働きたい」と思えるような環境をつくりたいと考える。

 「震災がなかったら、ここまで強い思いは持てなかった。みんなで力を合わせて新しい産業をどんどんつくり、農家がやりがいを持てるようなものにしていきたい」。溶けることのない熱い思いで、ソフトクリームを作っていく。