「イノブタ」分布拡大か...二本松で個体発見 原発事故で野生化

 

 東京電力福島第1原発事故による住民避難で野生化した家畜のブタと、野生イノシシが交雑した「イノブタ」の分布が、原発事故の帰還困難区域や旧避難区域の外にも拡大している可能性があることが、福島大の研究グループの調査で分かった。研究グループが4日、発表した。原発から40キロ以上離れた二本松市でも個体が見つかったという。

 研究は、福島大大学院共生システム理工学研究科の兼子伸吾准教授(41)と同研究科博士後期課程2年のドノバン・アンダーソンさん(26)らの研究グループが、原発周辺自治体や二本松、福島の両市などで捕獲した345頭のイノシシのDNAを分析。2017(平成29)年に行った調査では大熊、浪江両町など原発から20キロ圏内を中心にブタ由来の遺伝子を持つ個体が見つかっていたが、18年に行った今回の調査ではさらに生息域が拡大し、原発から40キロ以上離れた場所でも同様の遺伝子を持ったイノブタが見つかったという。

 また、飼育されているブタの遺伝子は種類が多いのに対し、今回の調査で検出されたブタ由来の遺伝子は1系統のみだったため、原発事故後に野生化したブタの多くは自然に淘汰(とうた)され、1系統のみが生き残り、分布を拡大しているとみられることも分かった。

 兼子准教授は「透明な水の流れに垂らした赤インクのように、ブタ由来の遺伝子があることでイノシシの移動を捉えることができた。帰還困難区域のイノシシが高い移動性を持つことが示された」と語った。今回の調査ではブタ由来の遺伝子を持ったイノシシの割合は過去の調査と同等の約5%と低く、兼子准教授は「東北におけるイノシシの増加はイノブタの増加によるものではないと考えられる」としている。

 同グループが8月8日、科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」に論文を公開した。研究には同研究科の藤間理央さんと根岸優希さん(博士前期課程2年)、難波謙二教授、同大環境放射能研究所の石庭寛子特任助教とトーマス・ヒントン客員教授らが加わった。