【車社会の行方・高齢ドライバー】判断の『遅れ』...重大事故に

 
開発した運転技能向上トレーニングアプリを操作する野内准教授。「より安全に運転するには認知機能を上げるのが重要」と話す=仙台市・東北大

 「20」と「26―5」はどちらの数字が大きいか―。

 画面に映し出された問いに、リモコンで答える。専用の機械をつなげば自宅のテレビで簡単にできるゲームだ。問われているのは状況を素早く判断できるかどうか。それは車の運転でも重要な要素になってくる。ゲームは運転者の認知機能を高め、運転技能の向上に役立てようと、東北大加齢医学研究所のグループが開発したトレーニングアプリ。アプリはほかに、集中力を養うゲームと、物体の動きを予測するゲームがある。

 ピークは20代

 研究グループは宮城県内に住む65歳以上の高齢者60人に1日20分、この3種類のアプリを使う人と、別のゲームをするグループに分け、6週間(週5回以上)で運転技能が向上するかを検証した。この結果、アプリを使った人は認知力や車の運転技能などが向上することが判明した。

 「認知機能は20代がピークで、徐々に落ちていくのが一般的。その事実をきちんと受け止められるか。『自分はまだ若い』と思っても判断スピードなどは落ちていき、大きな事故になりかねない」。検証結果を踏まえ、研究グループの野内類准教授はこう話す。

 過信しない

 認知や判断の重要性を指摘するのは「交通のプロ」も同様だ。宮城県警警察官として多くの交通事故に関わり、退職後に交通事故の調査や鑑定などをする日本交通事故調査機構(仙台市)を立ち上げた佐々木尋貴さん(55)は「車の運転は認知、判断、操作の繰り返し。高齢になるほど認知や判断が衰え、操作の遅れにつながる」と警告する。「衰えを自覚することが大事で、自分の運転技能を過信しないでほしい」。佐々木さんは言葉に力を込める。

 研究グループの検証は平均年齢が72.3歳だったが、それ以上の高齢者にも効果はあり、実際の事故減少につながるのか。「まだ検証しきれていない点もある」。野内准教授はさらなる研究の必要性を認める。

 それでもトレーニングが運転技能の向上に一定の効果があることは実証された。「今回の研究のように何か取り組みをすれば、認知機能や運転技能が向上する可能性は十分ある。より安全に運転するためには認知機能を上げるのが重要。アプリなどを通して積極的に予防策をしてもらいたい」。野内准教授はこう指摘し、「例えば市役所に置いてもらい、自由に使ってもらえるような形になれば」と期待する。