攻防の焦点...地震予測「長期評価」 東電強制起訴19日判決

 
2002年7月31日に国の地震調査研究推進本部が公表した、本県を含む太平洋岸に大津波の危険があるとした地震予測「長期評価」

 東京電力福島第1原発事故を巡り、業務上過失致死傷罪で強制起訴された被告の勝俣恒久元会長(79)、武黒一郎元副社長(73)、武藤栄元副社長(69)の東電旧経営陣3人の判決公判は19日、東京地裁(永渕健一裁判長)で開かれる。検察官が2度にわたり不起訴とし、検察審査会によって起訴に至った事件。刑事責任がどう判断されるか、判決が注目される。

 争点は大津波を予見し、事故を回避できたかどうか。一般的に業務上過失致死傷罪が成立する要件は、予見可能性と結果回避義務違反の2点。今回は〈1〉大津波が来ることを具体的に予見できたのか〈2〉対策を講じれば津波被害は防げたか―が焦点となり、旧経営陣は無罪を主張している。

 検察官役の指定弁護士は、予見可能性と結果回避義務違反があったとする立証の柱に、本県沖での大津波の危険を指摘した国の地震予測「長期評価」(2002年に発表)を据える。

 指定弁護士の論告などによると、この長期評価を基に東電子会社が「最大15.7メートルの津波が第1原発の敷地を到来する可能性がある」との試算結果を作成。試算結果は、東電子会社が東電に2008(平成20)年3月に報告したとされる。

 国の「長期評価」は地震学の専門家などが作ったもので60ページ超のもの。正式には「三陸沖から房総沖にかけての地震活動の長期評価について」と題してまとめられている。東電の担当者から試算結果の報告を受けた武藤元副社長は「専門家でも意見が分かれたもの」と長期評価の信用性に疑問符をつけ、これによって出された試算結果では「対策を決められる状況ではなかった」などとしている。

 指定弁護士は武藤元副社長以外の2人についても、「経営陣らが出席した09年2月の社内会議で、吉田昌郎元福島第1原発所長(故人)が長期評価を基に『14メートル程度の津波が来る可能性があるという人もいる』と発言していた」と指摘。

 この点に対し、武黒元副社長は「長期評価は専門家の評価が分かれており、大津波が来るとは考えなかった」、勝俣元会長は「(吉田所長の)発言のみで津波の予見可能性が生じたとは言えない」と予見可能性を否定した。

 これまでの裁判で証人として法廷で証言した地震の専門家たちの間でも、長期評価の信頼性についての意見は分かれている。