「までいな仕事一生」 40歳の鍛冶職人、飯舘に手作り刃物工場

 
火入れ式で出席者が見守る中、種火を付ける二瓶さん。までいの村で職人として歩みを進める

 "までいの村"で、一人の鍛冶職人が大きな一歩を踏み出した。福島県福島市の金物屋「刃物の館やすらぎ工房」は、飯舘村に手作り刃物の製造工場を整備。「この地で、一生懸けて成長していく」。現地で14日、待望の火入れ式に臨んだ同社の4代目でもある鍛冶職人、二瓶貴大さん(40)=福島市=の思いは熱い。

 「鍛冶職人は日本の文化を支えてきたが、徐々に減少している。日本の文化を絶やしたくなかった」。二瓶さんは2011(平成23)年から職人としての修業を始め、新潟県三条市で技術を磨いてきた。現在は福島県唯一の刀鍛冶、藤安将平(本名正博)さんにも弟子入りし、作刀技術を学んでいる。

 二瓶さんはこれまで「研ぎ」などを行ってきたが、職人として本格的に刃物を作り始めるため、工場の建設を決意。建設先を探した結果、機械の騒音対策などで条件が整った飯舘村への進出が決まった。村にとっても原発事故後、村内への新たな企業の進出は初めて。建設に当たっては、旧草野幼稚園の施設約920平方メートルを改修し、ガス式の炉などを導入した。

 工場では、同社を代表する包丁「やすらぎ」などの刃物類を製造する。二瓶さんによると、やすらぎは刃は薄いものの切れ味が良く、刃が欠けにくいのが特徴という。鋼を延ばす「鍛造」から仕上げまでを一貫して行うといい、「手間暇は掛かるが、全工程で品質を考えることができる」と二瓶さん。菅野典雄村長も「仕事への心掛けが(村の方言で丁寧などを意味する)『までい』そのものだ」と村への進出を歓迎する。

 二瓶さんには、さらにかなえたい夢がある。藤安さんの下で刀鍛冶として国から承認を受けた後、この工場で日本刀を作ることだ。今後も、月に1週間程度は藤安さんの仕事場に通い、日本随一の作刀技術を学ぶという。

 火入れ式に参加した藤安さんは「数年後、今度は刀鍛冶としての火入れ式に参加するのが今から楽しみだ」とまな弟子の将来に期待を寄せた。「まだまだ覚えることはたくさんあるけれど、地道に歩みたい」。二瓶さんの"までいの村"での新たな挑戦は、まだ始まったばかりだ。

 火入れ式では、二瓶さんが種火を作る工程を披露。リズムよく金づちで鉄をたたいて火が付くと、出席者から拍手が送られ、工場の稼働を祝った。刃物の館やすらぎ工房社長で二瓶さんの父信男さん(72)は「いただいた仕事をまでいにやっていく」と決意を語った。