支援感謝伝える真の『おもてなし』 ラグビーW杯会場・釜石市

 

 ラグビー世界一を決める第9回ワールドカップ(W杯)日本大会で、東北唯一の会場となっているのが岩手県釜石市だ。25日のフィジー―ウルグアイ戦をはじめ2試合が行われる同市では、東日本大震災で約1000人が犠牲になった。福島市が野球・ソフトボール競技会場となる東京五輪を、復興の現状を世界に発信する機会と位置付ける本県。五輪まで1年を切る中、復興と支援への感謝を伝えようと準備を進めてきた釜石市を巡った。

 製鉄業で栄えた「鉄の街」、漁業基地としての「魚の街」、ラグビー日本選手権を7連覇した新日鉄釜石の「ラグビーの街」の三つの顔を持つ釜石市。だが、W杯が始まった今はラグビー一色だ。試合会場となる釜石鵜(うの)住居(すまい)復興スタジアム周辺ばかりでなく、街中にのぼり旗があふれる。震災後の夢と希望を求めてW杯を誘致しただけあって、市民の表情は明るい。

 「世界に復興支援の感謝を伝えたい」。ラグビーチーム「釜石シーウェイブスジュニア」に所属する同市の川崎拓真君(12)はそう話す。自宅は津波で流されたが、幼かったため当時の記憶はない。それでも「震災から立ち直り、復興に向かう姿を見てほしい」。試合当日には、子どもたちが観戦者に感謝を伝える企画が予定されているという。

 市は国内外からの観光客に対応するため、独自ボランティア組織をつくって市民の協力態勢を整えた。飲食店や宿泊施設は「応援の店」として、多言語パンフレットなどを配布している。初めて釜石を訪れたが、市民からの親切な対応に好印象を持った。東京五輪に向けては福島市が同様の取り組みを進めており、市民の協力こそが真の「おもてなし」につながると実感した。

 釜石市中心部には大会公式の「ファンゾーン」が設置されている。パブリックビューイングのほか飲食ブース、復興情報発信ブースもあり、多くの人が詰め掛けていた。W杯を待ち望んでいたという同市の広田美奈子さん(56)は「ラグビーを通して釜石が元気になり、若者が希望を持てるまちになれば」と熱っぽく語った。

 同スタジアムのある鵜住居地区は、同市の中でも震災被害が大きかった。市は同スタジアム近くに震災メモリアルパーク「うのすまい・トモス」を整備。ラグビーだけでなく、震災の恐ろしさや防災の重要性を観戦に併せて学ぶことができる施設だ。「復興五輪」を発信するためには、本県でも観戦者が震災、復興を間近に感じることのできる環境づくりが不可欠と感じた。