鍵握る人材定着 JICAベトナム調査、企業進出の可能性探る

 

 ベトナムで23~27日に行われた国際協力機構(JICA)の民間連携理解促進調査。同国進出を検討する東北地方の企業関係者らが現地企業や技能実習生の人材育成機関などを訪問した。経済成長が続くベトナムでは、多くの日本企業が安定した経済活動を展開する一方、人材確保や急速な都市化に伴う環境の悪化など、新たな課題も顕在化している。同行取材を踏まえ、本県企業の進出や人材の活用について今後の可能性を探る。

 ◆◇◇豊富な労働力

 オフィスの入り口近くに立つ二宮尊徳の像、整然と靴が並べられたげた箱―。ベトナム最大の商都ホーチミンで技能実習生や日系企業向け人材育成に取り組むエスハイ社。語学だけでなく礼儀や「報・連・相」など日本式ビジネスを徹底して学ぶ環境が整っていた。

 ベトナムは人口が年間100万人ペースで増加している。国内企業のほとんどは設立から間もない中小企業で、増加する労働人口の受け皿が十分ではなく、海外に多くの労働者を送り出している。同社のような送り出し機関は国内に約320あり、日本のほか韓国、台湾向けの機関が多い。

 20代以下が全人口の約半数を占める豊富な労働力や勤勉な国民性は海外直接投資(FDI)を加速させ、日本からも製造業や不動産業を中心に2千社近い企業が進出している。これまでに4千人以上の技能実習生やエンジニアを日本に送り出している同社は、帰国実習生のフォローにも力を入れており、高い技術を身に付けた人材は現地の日本企業でも重宝されている。

 ◇◆◇離職率の高さ

 ベトナム南部に位置するドンナイ省内の工業団地に現地法人を構え、過積載車両を取り締まる走行計量システムの運用などを手掛ける田中衡機工業所(新潟県)では50人を超える現地スタッフが活躍している。現地法人の長谷川英利社長(45)はベトナム人のスタッフについて「勤勉で、新興国の中でも特に能力が高い人材が多い」と評価する。一方、ベトナムでは自己成長のために転職を繰り返すという考えが一般的だ。早期離職も多く、人材の定着に苦心している日本企業も少なくないという。長谷川社長は「目標設定やそれに対する評価を明確に示し、ステップアップを感じられる体制が大切だ」と指摘する。

 ◇◇◆浄化槽に商機

 経済成長が著しいベトナムは急速な都市化に伴う環境問題や保健医療体制の整備など新たな分野で課題を抱え、対応が求められている。首都ハノイに隣接するフンイェン省で県内3社の共同企業体が実施している浄化槽の普及事業も、こうした課題解決への取り組みの一つとして国内外から注目されている。

 環境分野への参入例はほかにもあるが、浄化槽を導入するだけでなく、維持・管理体制までをパッケージ化して定着させようという点にこの事業の特異性があるという。共同企業体で維持・管理の分野を担う昭和衛生センター(南相馬市)の田原義久社長(60)は、急速な都市化に生活排水インフラの整備が追い付いていない現在の状況を踏まえ「環境問題への意識が高まり、浄化槽の有効性への理解が広がれば、需要は高まり、併せて維持・管理の仕事も増える」と商機をみる。

 今回の調査では、人材育成や維持管理体制の構築など、業種にかかわらず、さまざまな分野で持続可能性を重視した事業展開が見られた。調査に参加したこころネット(福島市)の伊東弘樹経営企画部営業開発担当次長(43)は「目先の利益だけでなく、長期的に事業を継続していくための枠組みを丁寧につくることが大切だと感じた」と話した。