「鮭祭り」9年ぶり復活 楢葉で20日開催、震災後初の木戸川産

 
水揚げしたばかりのサケを手に、風評払拭と観光再生を誓う鈴木さん=楢葉町

 古里の秋の味覚を再び届けたい―。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故で中断していた楢葉町の秋の風物詩「木戸川鮭(さけ)祭り」が20日、9年ぶりに復活する。今年は震災後に木戸川産の親サケから採卵してふ化、放流した稚魚が成魚となって初めて川に帰ってくる。力強く遡上(そじょう)を始めたサケの姿に、漁協関係者らは風評払拭(ふっしょく)と観光再生を誓う。

 ◆名物の紅葉汁も再び

 「(会場)周辺には車が連なり、町内の民宿も満杯だった」。鮭祭りは震災前、新鮮な切り身やイクラを目当てに5千人を超える来場者が訪れる町の観光の目玉だった。木戸川漁協鮭ふ化場長の鈴木謙太郎さん(37)は当時のにぎわいぶりを振り返り、目を細める。

 町中心部を流れる木戸川はかつて、秋になると7~10万匹のサケで覆い尽くされた。本州有数の遡上数を誇っていたが、震災でふ化場ややな場が被災。原発事故に伴う全町避難でサケの回帰率を上げるための要となる稚魚の放流も中断を余儀なくされた。

 伝統のサケ漁の本格再開に向け、漁協は2015(平成27)年9月の避難指示解除に合わせ、木戸川沿いで事業を再開。サケを捕獲、採卵し、再建した自前のふ化場で稚魚を育てた。16年3月には震災後初めて町内でふ化した稚魚の放流にこぎ着けた。

 漁協によるとサケは約4年で生まれた川に帰るとされ、今年がその年に当たるという。今年の遡上は始まったばかりだが、2日には今季初となる3匹を水揚げした。今月中旬には漁も本格化する予定だ。川に戻るサケは震災前の10分の1程度の6千~1万匹の見通しだが、鈴木さんは「木戸川のサケは回遊の距離が長く栄養を豊富に蓄えている。身の質もイクラの粒の大きさも極上」と胸を張る。鮭祭りでは切り身やイクラなどを販売する予定で、サケの頭や骨でだしを取った名物の紅葉(こうよう)汁も無料で振る舞う。

 原発事故から8年半が過ぎても地元産品に対する風評は根強い。鈴木さんは「SNS(会員制交流サイト)などで双葉郡の情報は簡単に手に入るが、実際に足を運び現状を肌で感じてもらうことが風評払拭につながる。鮭祭りがそのきっかけになれば」と力を込めた。

 鮭祭りは午前9時30分~午後3時。