老人ホームが『水没』危機 いわき・鮫川氾濫、椅子で高さ確保

 
鮫川の氾濫で孤立し、高齢者とスタッフが身を寄せた施設の一角=16日午前、いわき市

 河川の氾濫や決壊など甚大な被害をもたらした台風19号が、県内に最接近した13日から1週間がたつ中、さまざまな危機的な状況が明らかになりつつある。

 「人が残っていると知ったときは顔面蒼白(そうはく)になった」。台風19号が本県に接近した12日夜から13日未明にかけて、いわき市遠野町を流れる鮫川が氾濫。老人ホームに取り残された高齢者ら8人の救助対応に当たった同市遠野支所の佐藤不二夫支所長(56)は、悪夢のような一夜を振り返る。

 氾濫で浸水した同市遠野町滝の川原地区は、大きくカーブした鮫川に囲まれるような地形になっており、地区内外を結ぶのは3本の橋と小さな林道しかない。1986(昭和61)年の「8・5水害」で浸水した地区であることを踏まえ、消防団が12日に2度、戸別訪問し、住民らに避難を指示。大半の住民が上遠野小に避難した。

 しかし同日午後8時過ぎ、地区内にある施設「きのこの山」の関係者から、高齢者7人とスタッフ1人が残っているとして支所に救助の要請があった。施設にも避難を呼び掛けたはずだったが、高齢者らは避難できていなかった。

 2本の橋はすでに鮫川の濁流にのみ込まれ、もう1本の橋に続く道も浸水で通行止めとなっていた。濁流はさらに勢いを増し、施設に近い鮫川の堤防の一部が決壊。土砂災害の危険性が高い林道も使えず、関係者は無事を祈るしかなかった。

 施設を運営する渡辺典明社長(43)が受けた報告によると、同日午後9時ごろ、平屋2棟の施設へ浸水が始まり、一気に1メートルほど水かさが増したという。少しでも高いところにと、スタッフが高齢者7人を別棟のステージ上に移し、できるだけ水につからないよう椅子で高さを確保してしのいだ。

 川原地区の下流にある高柴ダムの緊急放水により、水位は次第に低下した。13日午前1時ごろになって、ようやく高齢者らの無事を確認。同日午前4時ごろ、鮫川が落ち着いたのを見計らい、8人を救助した。

 人的被害の発生は幸い免れたが、佐藤支所長は「明るいうちに避難させられていれば」と高齢者らの避難を巡る課題を痛感。渡辺社長は「命があって何より」と想定外の事態に言葉少なだった。

 高柴ダムの緊急放水では、下流域の市街地に大きな浸水被害はなかったとみられているが、同市山田町の鮫川の堤防が一部崩壊したほか、近くの農地で浸水が確認されている。関係者は「あと1時間、緊急放水が続けば下流域も危なかったのではないか」と話す。

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