台風19号...『弱者』避難先どこ 福祉向け届かぬ情報に不安な夜

 

 甚大な被害をもたらした台風19号は、高齢者や障害者にも猛威を振るった。いわき市では、重い肢体不自由や知的障害のある重症心身障害児(重心児)を預かる療育施設が浸水被害に遭い、利用者や家族らが一般避難所への避難をためらうなど行き場に迷った。福祉避難所の情報も把握できず、不安な夜を過ごした家族ら。「災害弱者」の避難の課題が浮き彫りとなった。

 「避難所の受け入れが可能だとしても利用にちゅうちょしたと思う」。いわき市好間町下好間の多機能型重心児デイサービス「どりーむず」を運営するNPO法人ままはーとの理事長笠間真紀さん(43)は振り返る。笠間さんは台風が接近した10月12日夜、膝上まで泥水が迫る中、呼吸器を付けた重い障害のある息子(9)ら家族6人で施設から車で高台に避難した。

 子どもたちは普段から細かな介助が必要とされる。避難所で医療機材を置く場所や命をつなぐための電源が確保できるか、万一、容体が変わったときに混雑した駐車場に救急車が入れる広さはあるのか―。笠間さんたちは避難所に行かず、大雨が車体を打ち付ける中、車中泊で朝を迎えた。

 どりーむずのスタッフで利用者でもある女性(45)は、自宅が床上浸水の被害を受け、2階で避難生活を過ごした。気管切開をした次女(3)の健康状態を気遣いながら、片付けを両立するのは厳しいと吐露する。「福祉避難所があれば、避難できたかもしれない」と語った。

 笠間さんは医療法人医和生会の協力を受け、同市平の介護サービス施設「いきいきはうす」の一角で仮営業を始めた。「子どもも家族も取りこぼさない。活動理念の『重心児の笑顔と地域をつなぐ』を大切にしていく」。福祉避難所の機能を持たせた施設にしようと心に決め、障害者と家族の暮らしを支えている。

 いわき市非公表「一般の殺到懸念」

 いわき市では、一般避難所で障害者や高齢者らを確認した場合、福祉避難所に2次避難してもらっている。一般避難所に来るのが前提となるため、福祉避難所の開設情報を個別には発信していないのが現状だ。

 県によると、周知方法は各市町村の判断に委ねられている。公表しない理由について市は「一般避難者が福祉避難所に押し寄せ、支援が必要な人に行き届かない危険性がある」と説明する。2016年の熊本地震では一般市民が押し掛ける問題も起きている。