台風で町中浸水...被災梁川『苦悩』続く 伊達物産は年末へ奮闘

 
片付けが進む倉庫の状況を確認する伊達物産の清水さん

 台風19号で大きな浸水被害を受けた伊達市梁川町の事業所が、岐路に立たされている。市によると20日現在、商工会に所属する中小企業を中心に146件が被災し、被害総額は106億2000万円に上る。年末を目前に控え、経営者の苦悩は続く。

 「一番売れる時期に生産が落ち込むのは痛手だ」。ブランド鶏の「伊達鶏」を加工・生産する伊達物産。クリスマスなど出荷の最盛期を迎える12月を前に、社長の清水建志さん(34)は不安を口にする。

 本社と倉庫1棟が浸水したほか、県北地区や宮城県丸森町にある契約農場のうち3カ所で鶏舎が運営できない状況。相馬市の工場は被災を免れたため現在は在庫や被害の少なかった農場の鶏肉を使って加工と流通を行っているが「被災した農場の復旧のめどは立っていない」という。

 看板の伊達鶏への影響は最小限で済みそうだが、もう一つの柱「ハーブ鶏」は少なくとも15万、16万羽は仕入れられず、例年に比べて1割ほど減少する見込み。「もし半年で復旧したとしても、一から鶏を育てなくてはならない」。本年度内の回復は難しい状況だ。

 それでも、清水さんは再起に向けて前を向く。「お弁当・お総菜大賞2019」で全国1位を獲得した「肉ゴロッとおにぎり」の販売を23日、再開する。被災直後に駆け付けた顧客から激励を受けたという清水さん。「これからも伊達鶏のファンを増やせるよう、できるところから回復させていく」。ファンからの応援が、再開への原動力だ。

 老舗酒店・宗川本店...廃業も覚悟

 浸水のせいか、暗く湿っぽい店内。差し出された名刺は湿り、裏にもう1枚くっついていた。「商売をやめる良い機会なのかも」。創業140年を誇る老舗酒店「宗川本店」の4代目、武田寅之助さん(72)は伝統が途切れることも覚悟する。注文で使うパソコンとプリンターも水に漬かり、とても営業を再開できる状況にはない。

 店は氾濫した塩野川から約100メートル。川の水は1階のほぼ全てをのみ込んだ。避難した2階から見た街の光景は「湖のようだった」。

 店の歴史を残そうとしていた最中だった。創業当時は周辺に競合相手がなく「殿様商売状態」だったが、時代の流れとともに大型店やコンビニが台頭し、売り上げが減少。廃業もちらつく中、簡単な居酒屋を開いてみたり、予約制に切り替えたりと、伝統を変えてでも老舗の看板を守る道を模索していた。

 周囲のコンビニなどが台風被害から復旧し始めた今月7日、店を若い男性警察官が訪ねてきた。「店は再開しますか」。心配する警察官。「分からない、途方に暮れてるんだ」。投げやりに答えた。

 店内の棚には、絵が飾られている。赤、黄。酒屋仲間が贈ってくれた水彩画。優しげな筆致で描かれ、店内のそこだけはぱっと明るい。「これを自分の手で壊してしまうのは...」。二の句を継げず、絵から目をそらした。