「倉本聰さん点描画展」富岡で開幕 夜の森の桜...切ない思い代弁

 
倉本さんの新作に見入る来場者

 東京電力福島第1原発事故で帰還困難区域となった富岡町夜の森地区を訪れ、桜の木々を描いてきた脚本家倉本聰さん(84)の点描画展が1日、同町文化交流センターで開幕した。「この町からどうして人が消えたのか」。桜の切ない思いを代弁する言葉が添えられた作品が、古里の再生へ歩む住民の感動を呼んでいる。

 作品展は「森のささやきが聞こえますか―夜の森桜はそっと呟(つぶや)く」と題し、細いペン先で無数の点を打った緻密な作品計28点が並ぶ。このうち9点は倉本さんが今年3月に仕上げた新作で、県内では初公開。同日、会場を訪れた倉本さんは「彼ら(桜の木々)は怒りを口にすることはできない。彼らの内面に寄り添いたかった」と、住民の避難後も取り残された桜の木々への思いを語った。

 来場した元町職員で町内に住んでいた女性(51)=須賀川市在住=は「桜がどんな気持ちで住民の帰りを待っているのか。作品と倉本さんの言葉から木々の思いがひしひしと伝わった」と話した。

 福島民友新聞社が昨年開催した展示会をきっかけに開催が決まった。期間は20日まで。時間は午前9時~午後5時。

 倉本聰さん「内面に寄り添いたかった」

 点描画展の開幕に合わせ、会場では倉本さんが「あたり前のくらしを求めて」と題して講演した。倉本さんは現代社会について「ありとあらゆるものに押し出され、すごいスピードで前に進んでいる。果たして心はついてきているのか」と問い掛け「根底から物事を考え直すことが『あたり前のくらし』を取り戻すために必要」と訴えた。

 また、倉本さんは豊かさや幸せの定義について「家庭があって愛情にくるまれていることだと思う」と強調。一方で「幸福は金銭的なリッチさと結び付き、便利さを求める人間の欲望が止まらない状況にある」と課題を指摘した。さらに限りある資源である石油が今後枯渇するとの見通しを示し「(石油枯渇への)心細さが原発に行き着いた」と持論も展開した。