福島の夢を詰め込んだ「眠り杉枕」 磐城高箸、初の大口輸出へ

 
廃校を改修した工場にある元保健室のベッドに寝そべる高橋さん。「眠り杉枕で世界制覇したい」と夢を膨らませる

 「福島みんなの夢を詰め込んで」―。いわき市田人町の山あいの工場で作られるそんなキャッチコピーの枕が、海外に大口輸出される見通しになった。枕を手掛けるのは、地元産の間伐材から高級割り箸や鉛筆などを製造する磐城高箸。社長の高橋正行さん(46)は「こんな山奥から世界を目指すのは痛快。世界制覇したい」と夢を膨らませる。

 輸出する枕は「眠り杉枕」。強度不足の割り箸を捨てずに活用するため、枕1個当たり500膳の割り箸をチップ状に裁断し、詰め込んである。同社相談役の鳥居塚実さんの発案を基に開発が進められたが、チップから出る「おが粉」を封じ込めることに苦戦。復興庁の支援チームとタッグを組むなど、多くの協力で2016(平成28)年12月に完成した汗と涙の結晶だ。

 輸出によるブランド力の向上を模索する高橋さんは、いわき産学官ネットワーク協会や県の支援事業を活用し、昨年2月からシンガポールの投資会社JCSグループと商談を進めた。

 しばらくは交渉の進展が目に見えず、不安や焦りに駆られた。しかしその不安をよそに、いわき産杉の豊かな香りや優れたクッション性などを生かした眠り杉枕の高い品質が同グループ会長の心をわしづかみ。昨年12月、世界展開を狙う高級寝具ブランド「KOMME(コメ)」の枕として、同グループが海外で独占販売する契約を結んだ。交渉中、原発事故の風評を感じることは一切なかった。

 同グループは、21年3月までにKOMMEの商品をシンガポールやマレーシア、香港、中国、アメリカ、ドイツなどで順次販売する計画。磐城高箸は2月末に第1便となる枕50個を輸出する予定で、その後については同グループから「コンテナで送ってくれ」と注文を受けている。

 磐城高箸はこれまで、枕を台湾に20個ほど輸出していたが、今回はその実績をはるかに超える。目標とする年間千個の輸出が実現すれば、材料となる杉の消費量が大幅に増える。高橋さんは「先人が植えた杉に付加価値を付けて世に出せる。森林環境の改善や福島のイメージアップにも貢献したい」と意気込む。

 さらに、この輸出を成功させることで「ほかの過疎地域でも、方法を変えれば世界を目指せると思ってもらえたらうれしい」と中小企業の希望の星を目指す。