【聖火の地を歩く】3月26日・被災地 交じり合う...爪痕と再生

 

 東京五輪の国内聖火リレー開始まで1カ月。3月26日にJヴィレッジ(楢葉町、広野町)を出発し、3日間で県内26市町村を巡る。五輪ゆかりの地や自然豊かな街並み、そして復興の進む震災と原発事故の被災地。聖火が駆け抜ける県内を記者が歩いた。

 深い茶色の羽板をすのこ状に組んだデザインの駅舎はほぼ完成し、周辺の舗装作業が急ピッチで進む。県内聖火リレーのルートに追加された双葉町で再整備が大詰を迎えているJR常磐線双葉駅。駅前を見渡すと、屋根瓦の崩れた家屋やさび付いた看板が目を引いた。町の玄関口では生まれ変わりつつある姿と、東日本大震災から時間が止まったままの風景が入り交じる。

 町の許可を得て、3月4日に避難指示が先行解除される双葉駅周辺を訪れた。同14日には常磐線の運行再開を控え、聖火リレーのルートに組み込まれると目される駅周辺は工事関係者が慌ただしく行き交う。「晴れ舞台に向けて丁寧に急いで作業する」。重機に乗った男性が声を弾ませた。

 駅東口前でカメラを手に全身を覆う防護服とマスクを着用した一行と擦れ違い、思わず携帯した線量計に目が向く。数値は毎時0.14マイクロシーベルト。除染前は毎時5マイクロシーベルト前後だった線量は大きく低下していた。

 「ここがラーメン屋さん。あっちが旅館で、そこが呉服屋さん」。同行してくれた町秘書広報課の板倉幸美さん(61)が指さす先に繁華街の面影はない。飲食店など約10軒が所狭しと並んだ駅前広場の一角は更地となり、今後にぎわいを生む活用策を考えるという。

 駅舎から太平洋に向かって延びる町道沿いには、震災の爪痕が刻まれた家屋や商店が点在する。町によると、当面は現状のまま維持される見通し。震災のすさまじさを物語るたたずまいと新しい駅の姿が対照的で、逆に復興の力強さが際立って見えた。「30年は帰れない。そう言われていた町の今を見てほしい」。駅から目と鼻の先にある自宅で生まれ育った板倉さんは、復興が進む古里に胸を張った。

 「若者戻る力に」

 聖火リレーの初日。聖火は開催理念である「復興五輪」を象徴するように、震災と原発事故の被災地を縦断する。避難指示の続く双葉町から国道6号を約25キロ南下し、聖火が出発するJヴィレッジを訪れた。日差しを浴びた芝生のピッチが青々と輝く。原発事故収束のための作業車両で埋め尽くされていたかつての姿はもうない。「聖火が古里の魅力を広く発信し、若い世代が戻ってくる力になればうれしい」。散歩に訪れた楢葉町の男性(87)は聖火に願いを託した。