カムバック!50年ぶり旧映画館「新富座」 70歳・斎藤さん奮闘

 
旧映画館「新富座」の再生を進める斎藤さん。かつての映写室には貴重なカーボン式映写機が残る

 会津地方で初の映画館として誕生し、長く町民に愛されてきた会津美里町の旧映画館「新富座(しんとみざ)」。惜しまれつつ1972(昭和47)年に閉館した後、当時の姿を残しながら約50年間、倉庫となっていた。交流の場としての活用を目指し、東京都出身の移住男性の手による再生プロジェクトが始まった。

 「会津に映画館を」との夢を膨らませ、再生に取り組むのは東京から只見町への移住を経て、昨年9月から会津美里町に住む斎藤成徳さん(70)。既に映画の試写や映画ポスターの展示などを行い、地域に開放している。

 斎藤さんが手作りした横幅12メートルの大型スクリーンも完成し、かつての映画館としての輝きが戻りつつある。展示している映画ポスターは子どもの頃から集めていた約4000枚の一部だ。

 スクリーンと客席は撤去されていた新富座。再生は電柱から電線を通すことから始まった。自ら高所作業用の足場に乗り、命綱を使いながら作業したこともある。斎藤さんは「大変だったが、どんどんきれいになっていくのがうれしかった。二度とシャッターを閉めることがないよう、会津の人が一日でも長くここに携わってほしい」と話す。

 東京では会社員として働いていたが、映画好きから「広い場所で映画コレクションを飾りたい」と只見町に移住。会津美里町に閉館した映画館の建物が残っていることを知り、昨年6月に新富座を見学した。所有者に「建物を借りたい」と熱意を伝え、その場ですぐ契約したという。

 いつか会津に映画館を―。斎藤さんがそんな夢を抱くようになったきっかけが、10歳の時に観賞した映画「赤い夕陽の渡り鳥」だ。作品の舞台は磐梯山。温泉の元湯の権利争いなどの問題を、小林旭さんが演じる流れ者の主人公が解決する和製西部劇。ヒロイン役は浅丘ルリ子さんだった。

 「東京育ちの自分が、生まれて初めて雄大な自然の姿を見た。人生が変わるほどの感動だった」。斎藤さんの心の中には、会津が舞台となったこの映画を一人でも多くの人に見てもらいたいとの思いがある。

 今後はホームシアターとして地域に開放し、不定期で試写会を開くなどして当面は町民の憩いの場を目指す。夢を知った町民も再生に協力しており、斎藤さんと夢を追う。「これを足掛かりに、いつかは大手を振って『ここは映画館です』と言えるように育ってほしい」と話す。