今度は『広野コーヒー』 町振興公社栽培、希少性軸に販売戦略

 
コーヒーの苗木の手入れをする中津社長。写真奧にはバナナの木が生い茂る

 香り高い一杯で多くの愛好家を浜通りに―。広野町振興公社が、来秋の初収穫に向け、町内の二ツ沼総合公園で全国でも珍しい国産コーヒーの栽培に挑戦している。量は少ないながらも品質の高い豆作りに取り組み「広野でしか飲めない」という希少性を前面に出した販売戦略を描く。

 「国産コーヒーは1杯1000円以上でも飲みたいというファンが大勢いますよ。作らないのですか」。公社がコーヒー作りを決めたのは、2018(平成30)年にハウス栽培を始めたバナナの売り込み先で、仕入れ業者から聞いたそんな一言だった。公社の中津弘文社長(63)は「これはいけるかもしれない」と考えた。

 公社は、東北では珍しいバナナの生産を始めたところ、話題を呼び県内外から約5000人の視察者を受け入れた成功経験があった。希少性は人を呼ぶ。昨年秋、バナナを育てている約700平方メートルのハウス内にコーヒーの苗木約200本を植えた。

 コーヒー豆の輸入業者などでつくる全日本コーヒー協会によると、過去5年間の国内のコーヒー消費量は45万~47万トン台で推移し、世界第4位。日常生活に欠かせない人も多いが、コーヒーの栽培は寒さが大敵で、国内では沖縄県や徳之島(鹿児島県)など一部の温暖な地域で試験的に栽培が始まったばかりという。

 公社が栽培する品種は、味や香りが良いとされるブルボン種。苗木を遮光ネットで覆うなど品質を高めるための工夫を凝らし、現在は実を付けるなど順調に成長しているという。収穫量の見込みは約2000杯分(約40キロ)と少量で、広く市場に流通させることはできないが、おもてなしには十分だ。

 同協会によると「コーヒー愛好家は酸味やコクなど味へのこだわりも強い。非日常感を演出する雰囲気づくりも重要」という。中津社長は、バナナとコーヒーを栽培するハウスに隣接する別のハウス2棟に、パパイアやパイナップルの苗木も植え「トロピカルフルーツミュージアム」と名付けた。南国の雰囲気にあふれる空間を演出し、愛好家を迎える計画だ。

 中津社長は「広野を訪れ、こだわりの限定コーヒーを味わってほしい。震災から10年を迎える節目の年に観光振興を飛躍させたい」と力を込めた。