【あの日の中合】夫婦で買い物はいつもそこ...心躍った華やかな灯

 

 日が暮れると、遠くからでも目立つ百貨店のショーウインドーの明かり。「華やかな洋服を着たマネキンがほほ笑んで並んでいて、見ていると心がワクワク、ドキドキした」。19歳の時に父の転勤で福島市に移り住んだ河内トキ子さん(76)=伊達市=は、当時の中合の印象をそう語る。

 1965(昭和40)年、22歳の時に同じ会社に勤めていた章(あきら)さんと結婚。中合に婚約指輪を買いに行った。何度も足を運ぶうち、緑がかった輝きを放つ真珠を見つけた。「海の底で、何年もかけて海の色を吸い取ったかのような色だった」。感激して、購入を決めた。価格は、章さんの給料2カ月分だった。

 前年に東京五輪が開催されたその年、福島の街は五輪の余韻を残し、高度経済成長の明るい雰囲気に包まれていた。河内さんは当時、「給料の何カ月分」というフレーズをよく耳にしたという。「それだけ高価な買い物も多かったんでしょう」

 中合の店内もにぎやかだった。「こんな洋服が欲しいんだけど」「何色が好きなんですか」。店員と親しく会話を交わしたのを覚えている。「街のみんなが中流意識を持っていて、穏やかに平和に暮らしていた。そんな時代だった」

 突然の別れの日が訪れたのは、河内さん54歳の時だった。12月の初雪が降った日、章さんが心不全で亡くなった。56歳。植物や自然が好きで、出しゃばらず、人に好かれる性格。中合で宝石フェアがあると、度々プレゼントを買ってきてくれる優しい夫だった。「夫婦で買い物といえば、行き先は中合だった」。息子の結婚式には、章さんの写真と真珠の指輪を持って出席した。

 章さんが亡くなって二十数年。この間景気は後退し、「1億総中流」と呼ばれた時代は遠い過去になった。

 そして今月、夫との思い出が詰まった中合が閉店する。「県都の光が消えてしまうかのようで寂しく感じる。あの場所をうまく生かして、新たなにぎわいが生まれていけばいいですね」。移り変わっていく時代に思いをはせながら、うっすら緑に光る真珠の指輪を見つめた。

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 今月末で146年の歴史に幕を閉じる中合福島店。福島市民ら多くの人々にとってそこは、大切な人と特別な時間を過ごした思い出の場所だ。常連客など関係者に思い出や感謝の気持ちを聞いた。