都路地ビール、9月中にも生産開始 地元ホップ「愛される」名物に

 
ビール瓶を手にする本間さん。「愛される地ビールに」と意気込む

 ビール会社「ホップジャパン」は9月中にも、東京電力福島第1原発事故で避難指示が出た田村市都路町で、市内産のホップを使った地ビールの生産を開始する。「愛される地ビールに」。ビールに乗せた夢が被災地から広がる。

 同市都路町のグリーンパーク都路内に、地ビールを1日最大2千リットル生産できる醸造施設を設けた。テラス付きのスペースを設け、「採れたて新鮮ホップの味」が売りの地ビールを試飲できる。社長の本間誠さん(54)は施設内を見渡し、ほっと肩の力を抜いた。「やっとここまでたどり着いた」

 東北電力に勤めていた本間さん。研修のために2年間休職し、渡米したことがあった。米国で触れた「ビール文化」に心を動かされた。各地に地ビールを提供する「ブルワリー」があり、さまざまな味わいのビールを飲むことができた。仕事を午前中で切り上げ、午後にハイキングに行き、夕方からビールを飲む人もいた。「人生を楽しむ余裕を感じた」と振り返る。

 「いつか日本でもブルワリーを持ちたい」。そんな希望を抱いて帰国した直後、震災、原発事故が発生した。仕事では「電力は安全」と広報していただけに、心が揺れた。「人生一度きり。これからは環境に優しいことをライフワークにしていきたい」。2015(平成27)年に会社を辞め、起業。都路に醸造施設を設けた。

 創業から自社で商品を製造できるようになるまで5年ほどかかった。地ビールには原料のホップが必要だった。県内では昭和中期ごろまでホップ栽培が盛んだったが、産地が北に移り、栽培する農家がいなかった。田村市の農家3戸が栽培に挑戦してくれることになり、「地産ホップで田村名物の地ビールをつくってほしい」と頼まれた。原料がそろい、工場が完成したことで、生産準備が整った。

 本間さんが地ビールを通して描くのは「循環型社会」だ。生産時に残る麦芽のカスを家畜の餌にすることを検討している。また、福島大と連携し、宴会などで余ったビールを低濃度バイオエタノール発電に利用できるかも研究している。

 「地ビールで人を呼び込み、経済や農業を循環させたい」と本間さん。地元の人たちに「私たちの産品だ」と言ってもらえるような地ビールづくりを目指している。問い合わせはホップジャパン(電話0247・61・5330)へ。