大熊の復興...『着実』に前へ 大川原で初栽培の「酒米」初収穫

 
コンバインで収穫される酒米=9日午後2時、大熊町大川原

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から9年半を前にした9日、昨年4月に一部地域で避難指示が解除された大熊町の大川原地区で本年度初めて栽培した酒米が収穫された。また、3月に立ち入り規制が緩和された下野上地区では、町出身の大学生たちが成人を記念し小学校にモミの木を植樹。震災から10年を前に少しずつ自由に出入りできる地域が広がる中、さまざまな取り組みが進められている。

 「どんな稲ができるのか心配だったけれど、そこそこに実った」。大熊町農業委員会の根本友子会長(73)は、大川原地区の田んぼで黄金色の稲穂が刈り取られる様子を見つめた。

 町は除染が完了した同地区で2014(平成26)年度から17年度までコメの試験栽培を実施。検査で放射性セシウムが基準値を下回ったことから18年度から実証栽培を進めている。本年度は町役場西側の水田43アールで酒米「五百万石」の実証栽培にも取り組んできた。酒米は「新たな特産品」とすることを目指し、会津若松市の酒蔵で日本酒にしてもらう。原発事故後、役場を一時避難させた縁から、酒造りが盛んな同市とのつながりを保とうと企画した。

 収穫には、農業委員会や町などから約10人が参加し、コンバインで稲を刈り取った。根本会長によると、原発事故後、田んぼの地力が落ちているといい「地力回復には時間がかかるだろうし、収量も少ないだろう」と話す。だが「町内での酒米栽培は、事故前にはほとんどなかった。どのような日本酒ができるのか楽しみ」と期待を込める。

 おおくままちづくり公社によると、日本酒の名前の公募に300点以上の応募があったという。今後、名前や醸造を担当する酒蔵を発表、来年1月ごろに日本酒をお披露目する予定。

 新成人願い託し植樹

 「大熊の復興とともに"この子"も大きく育ってほしい」。本年度成人を迎える大熊町出身の大学生3人は同町の大野小に町木の「モミの木」を植樹し、古里復興の願いを託した。

 3人は町成人式実行委で、大学2年生の遠藤瞭さん(19)=新潟大、幾橋ほまれさん(19)=帯広畜産大、吉田望愛さん(20)=明治大。遠藤さんと幾橋さんは熊町小、吉田さんは大野小を卒業した。小学4年時に震災、原発事故の影響で会津若松市に設けられた熊町、大野両小の仮設校舎に移り、同じ校舎で学校生活を再開。その後、同市内にある仮設の大熊中で一緒に学んだ。仮設校舎は将来取り壊されてしまうため「自分たちが歩んだ学校生活を何かの形で残したい」と植樹を企画。帰還困難区域内の三つの小、中学校のうち、立ち入り規制が緩和された下野上地区にある大野小での実施を決めた。

 3人は高さ約30センチの苗木を植え、そばに大熊中卒業時の校長だった小野田敏之葛尾村教育長が揮毫(きごう)した標柱を立て、自分たちの名前を書き込んだ。吉田さんは「町の発展と苗木の成長を願っている」と話した。