「獣医師」が不足...人材確保急ぐ福島県 豚熱や新型コロナ対策

 
県動物愛護センターで施術に当たる獣医師。県は保健福祉、農林水産など多岐にわたる活躍の場をアピールする(県提供)

 本県の畜産業や食品の安全を支える獣医師が不足している。県は例年、10人前後を募集しているものの、採用は1桁にとどまっているのが現状だ。今月に入り、会津若松市で死んでいた野生イノシシの豚熱(CSF)感染が確認されたほか、新型コロナウイルス感染症対策に専門知識を生かせる場面も多いことから、県は多岐にわたる活躍の場をアピールし、人材確保を急ぐ。

 県によると、獣医師として勤務する県職員は家畜伝染病の防疫などに取り組む農林水産部、公衆衛生や動物愛護に携わる保健福祉部を合わせて約90人。本庁のほか、家畜保健衛生所、食肉衛生検査所、動物愛護センターなどで業務を行っている。

 このうち、約50人が従事している農林水産分野では現在、通常業務に加え、豚熱対応に追われている。冬季に向け鳥インフルエンザへの備えなども必要となる中、豚熱の汚染地域に入るケースもあることから1人の獣医師が複数の業務を掛け持ちすることは難しく「あと1・5倍ぐらいは必要」(畜産課)という。

 ただ、獣医師の確保は思うようには進んでいない。2017(平成29)年度は12人程度の募集に対して採用は9人、18年度は9人程度の募集に採用は3人、19年度は11人程度の募集に採用は4人にとどまった。本年度は16人程度の募集に対し、採用が決まったのは5人。県は現在、"2次募集"として改めて11人程度の募集を行っている。

 全国には国公私立合わせて17の獣医学大があり、毎年約3万9千人が卒業。そのうち約8割が獣医師となるという。このうち公務員となるのは2割程度で「全国的に不足しており、奪い合いになっている」(人事課)。県は毎年、獣医学生を対象にした体験研修や大学での説明会を開催してきたが、新型コロナの影響で春の説明会は中止を余儀なくされた。

 一方、約4割は動物病院など小動物診療分野に就職しているが、県も17年、三春町に県動物愛護センターを整備した。「全国から見れば遅れているが、それだけに専門知識をフル活用し、自由な発想で取り組める。若い人材に新しい目線で取り組んでほしい」(食品生活衛生課)と魅力を訴える。

 動物愛護ばかりでなく、畜産農家を支えるのも獣医師の大きな役割だ。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から来年3月で10年となる中、風評は根強く残り、さらに今年は新型コロナの影響で県産牛肉や地鶏の消費が低迷している。「ブランド力を高め、本県の畜産を守るには専門家の力は不可欠」(畜産課)。獣医師は本県の復興を支える担い手でもある。